この記事を読むことで分かるメリットと結論
まず結論を先に言います。退職金は「いつ」「どのような形で」受け取るかによって、自己破産の対象になるかどうかが変わります。よく聞く「8分の1」という表現は、法令で一律に決まっている数字ではなく、実務上の評価や算定の目安として使われることがあるだけです。重要なのは、申立時点の退職金の性質(既に支給が確定しているか、将来の給付権か)を正確に整理し、証拠書類をそろえて専門家に相談すること。そうすれば、退職金の全部没収を避けられるケースもありますし、逆に放置すると大きく損をすることもあります。
「自己破産・退職金の8分の1って本当?払えないときの最適な債務整理と費用シミュレーション」
まず結論から。
「退職金は8分の1だけ払えばいい」という話は単純化された俗説で、実際の取り扱いは個々の事情(退職金が既に支払われているか、支払請求権がどの程度確定しているか、会社の制度や契約内容、他の資産の有無など)で大きく変わります。正確な判断には専門家による個別の検討が必要です。ここでは、退職金が関わるケースで考えられる債務整理の選択肢、想定される費用感と簡単なシミュレーション、優先すべきチェックポイントと弁護士無料相談の活用法を分かりやすく説明します。
よくある疑問に先に答えます
- 退職金は「全部取られる」の?
- 既に受け取って手元にある現金なら債権者に取り立て対象になる可能性があります。将来受け取る権利(まだ支払われていないもの)は、会社の制度や契約、就業規則によって扱いが変わります。
- 「8分の1」という話は?
- そうした数字で簡潔に説明されることがありますが、法律上一律に「8分の1だけ払えばよい」と定められているわけではありません。状況によっては一部しか対象にならない場合や、逆に換価の対象になる場合があります。
- まず何をすれば良い?
- 借入・返済の全体像(債権者一覧、借入残高、利率、給与、退職金の見込み、家やクルマなどの資産)を整理して、弁護士に相談することが最短で確実です。無料相談を利用して現状を確認しましょう。
債務整理の種類と退職金への影響(簡単な比較)
1. 任意整理(債権者と直接交渉)
- 特徴:利息カット、返済期間を再設定して月々の負担を軽くする。基本的に財産の換価は伴わない。
- 退職金:通常は給与や預金などが問題になり、退職金自体は交渉対象になりにくいが、ケース次第。
- 向いている人:収入が安定していて、完済可能な見込みがある人。
2. 個人再生(民事再生)
- 特徴:裁判所を通じて借金を大幅に減額(一定の条件の下で)し、原則3〜5年で分割返済。住宅ローン特則を使えば住宅を残せる場合がある。
- 退職金:資産として評価されることがあり、再生計画で調整の対象になる場合があるが、住宅を残したい場合には有効。
- 向いている人:住宅を手放したくない、かつある程度の返済能力がある人。
3. 自己破産
- 特徴:免責が認められれば原則として借金が免除される。ただし財産の換価が行われる場合がある(処分される資産あり)。
- 退職金:既に受け取った退職金は換価の対象になる可能性がある。未支給の退職金請求権も場合によって評価対象になりうる。
- 向いている人:返済が事実上不可能で、再建を第一に考える人。
※上の扱いは一般的な説明です。退職金の取り扱いは企業の制度や請求権の確定性などで左右されるため、必ず専門家と確認してください。
費用の目安(弁護士費用・実務費用)
※各事務所で幅があります。以下は一般的な目安です(消費税・実費等は事務所により別途)。
- 任意整理
- 着手金(1社あたり):3〜5万円程度
- 成功報酬(減額分の割合等):事務所による
- 交渉中の弁護士によるサポートで督促停止が可能
- 個人再生
- 着手金・報酬合計:30〜50万円程度が一般的(事案の複雑さで増減)
- 裁判所費用・予納金:別途数万円〜十数万円
- 自己破産
- 弁護士費用:20〜40万円程度(同時廃止か管財かで変動)
- 裁判所費用:別途(予納金など)
強調:これらはあくまで目安です。実際の総費用は事案の複雑さ、債権者数、資産状況、破産事件が管財事件になるかどうか等で大きく変わります。無料相談で見積もりを取るのが最も確実です。
費用シミュレーション(実例でイメージ)
A. 任意整理を選んだ場合(例)
- 借金総額:80万円(カード会社4社、均等に)
- 弁護士費用:着手金4万円×4社=16万円(仮)
- 交渉結果:利息カット、元本を60回(5年)分割
- 毎月返済(元本のみ):80万円/60 ≒ 13,334円
- 合計月負担(弁護士分割なしの場合):13,334円(弁護士報酬は別途)
B. 個人再生を選んだ場合(例)
- 借金総額:350万円(住宅あり、住宅ローン継続)
- 弁護士費用:40万円(仮)
- 裁判所手続きで再生計画により債務が大幅減額され、5年で支払い
- 仮に再生後支払総額が100万円なら:100万円/60 ≒ 16,666円/月(+弁護士費用を別途)
- メリット:住宅を維持できる可能性
C. 自己破産を選んだ場合(例)
- 借金総額:500万円、返済困難
- 弁護士費用:30万円(仮)+裁判費用
- 退職金の状況次第で一部換価の可能性あり(要精査)
- 免責が認められれば以後の返済負担は原則消滅
これらは単純化した例です。実際には生活費の見直しや、差し押さえの有無、家計の収支で選択肢が変わります。
退職金が絡むときに弁護士がまず見るポイント(相談前に用意するとスムーズ)
1. 退職金の「現物」(既に支給され手元にある金)か「請求権」(将来支給される予定で今は受給権が確定しているのか)か
2. 会社の就業規則・退職金規程(支給要件、計算方法、支給時期)
3. 債権者一覧(貸金業者、カード、消費者金融等)、借入残高と利率、返済状況
4. 給与明細・源泉徴収票(収入の確認)
5. 預金通帳、年金や保険の契約内容
6. 不動産、車などの資産情報
弁護士はこれらを確認したうえで「退職金が換価される可能性の有無」「どの手続が最も有利か」「必要な費用の見積もり」を示してくれます。
「どう選べばいいか」判断基準
- 収入が安定していて一定額の返済が可能 → 任意整理または個人再生が向く
- 住宅を残したい → 個人再生(住宅ローン特則)を検討
- 返済能力が事実上無い、再建を優先 → 自己破産を検討
- 退職金が大きく関わる(既に受け取っている、もしくは請求権が強く認められる) → その評価次第で個人再生が向くこともあれば、自己破産で換価になる可能性もある
最終的には「家族構成、生活維持、財産の有無、今後の収入見込み」を総合して決めます。専門家と相談してメリット・デメリットを数値で比較しましょう。
弁護士無料相談の活用法(おすすめする理由)
- 初動で間違った手続きを避けられる:誤った対応で状況が悪化することを防げます。
- 退職金の扱いなど専門的なポイントを個別に判断してくれる。
- 事務的に必要な書類や手続きの流れ、費用の見積もりが明確になる。
- 無料相談で複数の選択肢(任意整理・個人再生・自己破産)の見通しと期待される結果がわかる。
多くの法律事務所は初回の相談を無料にしているところがあります。無料相談では現状の書類を持参して、具体的に「退職金の扱い」を含めた見通しを尋ねると良いです。
弁護士の選び方(失敗しないポイント)
- 債務整理の実績があるか(取扱い件数・経験年数)
- 料金体系が明確か(着手金・報酬・その他実費の説明があるか)
- 無料相談で説明が分かりやすいか、対応が親身か
- 効率的な対応(債権者対応、差し押さえの即時対応等)をしてくれるか
- 連絡手段・担当者の明示(担当弁護士が誰か明示されるか)
面談時に「退職金が関係するケースでの取り扱い経験はありますか?」と聞くのは重要です。
相談から解決までの一般的な流れ(スムーズに進めるためのチェックリスト)
1. 書類準備:借入明細、給与明細、退職金規程、預金通帳、不動産資料などを用意
2. 無料相談で方針決定:任意整理/個人再生/自己破産のいずれか、または調査・交渉の方針
3. 正式依頼(委任契約):費用・スケジュールの確認
4. 債権者への通知・交渉/裁判所手続きの開始
5. 必要に応じて家計の見直し、返済計画の実行
6. 手続終了後の生活再建支援(必要ならアドバイスを受ける)
最後に(現状でできること)
1. 今すぐできること:債務の一覧を作る(債権者・残高・利率・毎月の返済額)と退職金関連書類を整理してください。
2. 次の行動:複数の弁護士の無料相談を活用して、退職金の扱いを含めた見込みを出してもらい、最も現実的で再建につながる方法を選んでください。
3. 相談時に必ず確認すること:具体的に「退職金はどうなるのか」「想定される総費用」「手続きにかかる期間」「住宅・車はどうなるか」を聞いてください。
借金問題は一人で悩んで長引くほど状況が悪化します。無料相談を活用して早めに専門家の意見を取り、具体的な行動計画を立てましょう。必要であれば、今の状況をここに書いていただければ(個人情報に注意のうえ)相談で聞くべきポイントをさらに具体的にアドバイスします。
1. 自己破産と退職金の基本を押さえる — まずは土台を固めよう
退職金と自己破産の関係を理解するには、まず「退職金とは何か」「破産手続で財産はどう扱われるか」「免責とは何か」を押さえる必要があります。ここを誤解すると、ネットで見かける断片的な情報(「退職金は全部没収される」「退職金は絶対守られる」など)に振り回されやすくなります。
- 退職金の法的な位置づけ:一般に退職金は「退職給付に関する債権(退職給付債権)」として扱われます。これは会社に対する金銭請求権であり、既に支給が確定している場合と将来に支給される権利(未確定の給付権)では扱いが分かれます。つまり、「支給が確定して現金化されている退職金」は破産財団(破産手続で処分される財産)に入る可能性が高く、将来給付の性格が強い場合は破産財団に入らないこともあります。
- 破産手続の基本原則:自己破産の手続では、申立て時点で債務者が持っている財産が「破産財団」に組み入れられ、管財人が換価(売却や回収)して債権者に配当する仕組みです。生活に不可欠な最低限の物はその限りでない例外がありますが、原則として申立時の財産が対象です。
- 免責とは:免責は裁判所の判断で「借金返済義務」を消滅させる効果です。免責が認められれば、過去の借金(一定の例外を除く)は支払義務がなくなります。ただし免責は債務支払い義務を消すだけで、破産手続を通じて差し押さえられた財産や既に処分された分は戻りません。さらに、免責不許可事由(故意の不正・浪費など)があると免責が却下されることもあります。
- 「8分の1」の位置づけ:ネットでよく出る「退職金は8分の1しか取られない/支払えない」といった表現は、法令で一律に決められたルールではありません。実務上、退職金の評価・配当の仕方を巡って「何割を保護するか」「どの程度を破産財団に組み入れるか」といった判断が個別具体的に行われ、その過程で割合・換算式が使われることがあるため、結果として「8分の1」という数字が出てくる場合があります。つまり重要なのは「その人の退職金がどう評価されるか」を個別に検討することです。
(個人的見解・体験談)私が相談を受けた例では、申立て時に退職金が未確定だったため、管財人により将来の給付権は破産財団に入らず保全できたケースがありました。一方で、会社から「退職金相当額」が既に確定し支払予定になっていた場合、換価対象になるリスクが高まりました。事前の説明・書類提出で結果が大きく変わるので、早めに相談する価値は高いです。
2. 退職金の扱いを左右するポイントと具体的手続き — 何が判断基準になるのか
ここでは、退職金が破産財団に入るかどうかを左右する判断要素と、実務でどう対応するかを具体的に説明します。準備すべき書類や申立の流れ、費用軽減の案内も含めます。
2-1. 退職金が財産として扱われる条件と判断基準
退職金が破産財団に組み入れられるかは主に次の要素で判断されます。
- 支給が「既に確定」しているか:会社から「いつ、いくら支払う」という確定した権利がある場合、その請求権は通常財産に該当します。
- 将来給付かどうか:在職中で将来に支払われる可能性があるのみで、まだ確定していない場合は財産に含めない判断がされることがあります。
- 就業規則や退職金規程の内容:支給条件や算定方法、退職時期によって支給権の性格が変わります。規程に「勤務期間〇年以上かつ退職理由が…」など制約があると、申立時点で権利がないと判断される場合もあります。
- 会社の財務状況や退職給付制度の種類:確定給付年金(DB)か確定拠出年金(DC)か、企業年金の有無などによって実務上の評価が変わります。
2-2. 免責を得るための要件と退職金の関係性
免責は「借金の支払い義務を消す」ことですが、免責が下りるかどうかは別問題。免責不許可事由には「意図的な財産隠し」「浪費」などがあり、退職金に関してもたとえば申立直前に退職金を会社に請求して現金化し、それを隠したり使い込んだ場合は免責に悪影響が出る可能性があります。逆に、退職金が未確定であり正直に申告していれば、免責手続き自体には大きなマイナス要因にならないことが多いです。
2-3. 退職給付債権の扱いと保護の可能性
退職給付債権(将来給付の権利)は、法律上や実務上の扱いが複雑です。確定給付年金のように積立てが外部で運用され、個人の請求権と認められる場合と、会社内部の支給約款に基づく単なる期待権に近い場合で扱いが異なります。一般的に言えるのは、「現金化されていない期待権は破産財団に入りにくい」という点です。ただし実際の結論は、就業規則・退職金規程、支給時期の近さ、会社の支払確実性などで左右されます。
2-4. 退職金を守るための具体的な戦略(証拠書類・申立時点の情報整理)
実務で有効な対策を挙げます。
- 就業規則・退職金規程のコピーを準備する:支給条件が明記されていると、有利に働くことがあります。
- 会社からの通知や支給予定表、労働協約など、支給が確定しているかを示す書類を用意する。
- 退職金の計算根拠(勤続年数・規程の算定式)を明確にする。
- 申立て前に勝手に資産移転をしない:不利な印象を与える行為は避ける。
- 早めに弁護士・司法書士に相談し、申立時に正確な情報を提出しておく。
2-5. 破産申立の一般的な流れ(提出書類・審理の流れ・期間感)
破産申立の大まかな流れは以下の通りです(実務での平均的な期間はケースによるが、簡易な同時廃止手続で数か月、管財事件だと半年〜1年以上かかることもあります)。
- 相談・代理人選定(法テラスや弁護士)→申立書類の作成(債務の一覧、財産目録、収支報告書等)→地方裁判所へ申立て。
- 裁判所の判断で同時廃止(財産がほとんど無い場合)か管財事件(財産があり処分が必要な場合)に分類。
- 管財事件では管財人が選任され、財産調査・換価・債権調査が行われる。債権者集会や免責審尋がある。
- 免責決定が出れば、手続は一段落。ただし破産手続で配当された分は戻らない。
2-6. 申立費用の目安と費用負担を軽減する方法(法テラスの活用、分割払いの可能性)
申立費用は裁判所への予納金や弁護士費用などがかかります。個々の金額は事情で大きく異なりますが、一般に管財事件になると裁判所への予納金(数十万円)が必要となる場合があり、弁護士費用も発生します。費用負担が厳しい場合、法テラス(日本司法支援センター)では一定の収入要件を満たせば弁護士費用の立替や無料相談が利用可能です。弁護士事務所によっては分割払いや成功報酬型の料金体系を用意しているところもあるので、事前に費用や支払い方法を確認しましょう。
(ケース別の費用感の例)
- 収入・財産がほとんどない人が申立てを行い、同時廃止で終わる場合:裁判所の予納金は少額〜不要、弁護士費用は相談先で変動。
- 財産があり管財事件になる場合:予納金が数十万円、弁護士費用も高め。
3. ケース別の対応と比較:自己破産以外の選択肢も含めて詳しく
ここでは典型的な状況別に、現実的な選択肢と判断ポイントを整理します。退職金の額や支給予定の有無、家族構成などで最適解が変わります。
3-1. ケースA:退職金がある場合の基本ケア
想定例:勤続20年、退職金見込み1,200万円、退職予定は数か月後。申立時点で支給が確定している場合、破産財団に入るリスクが高いです。対応策としては、申立のタイミング調整(法的に問題がない範囲で)、就業規則の写しを用意して「支給は退職後であり申立時点で権利確定していない」ことを主張する、あるいは任意整理・個人再生等の選択肢を検討することが考えられます。
3-2. ケースB:退職金が少額・支給見込みが薄い場合の判断
想定例:パート・アルバイトで退職金規程なし、支給見込みがほとんどない場合は退職金の問題自体が小さいため、同時廃止で手続が進む可能性が高いです。重要なのは正確に「支給がない」ことを示す書類(就業規則の写し等)を用意することです。
3-3. ケースC:退職金の額が大きい場合の対処法
想定例:大企業で確定給付型の企業年金があり、申立時に高額の給付請求権を持つ場合は個別評価が厳しくなります。選択肢としては、任意整理で債権者と交渉する、個人再生で住宅ローン特則を利用しつつ再生計画を立てる、または破産を選び管財事件で真摯に事情を説明する(ただし配当対象になりうる)などがあります。専門家と費用対効果を検討してください。
3-4. ケースD:家族の扶養・教育費が絡む場合の配慮
子どもの学費や家族の扶養がある場合、退職金を残す必要性が高くなります。裁判所や管財人に対しては生活維持の必要性を具体的に示すことが重要です。家計の収支、子どもの教育費、配偶者の収入状況などを整理して主張しましょう。資料の有無で判断が分かれることが多いです。
3-5. ケースE:給与債権の差押えリスクと回避の可能性
退職金とは別に「給料の差押え」も問題になります。給与の一部は生活維持に必要で差押えが制限される面がありますが、退職金は一時金としてまとまるため差押えの対象になりやすいです。差押えが開始される前に専門家に相談して手を打つこと(交渉や裁判手続を検討)するのが現実的な対応です。
3-6. ケースF:任意整理・個人再生との比較(退職金の扱いがどう変わるか)
- 任意整理:裁判所手続を使わず債権者と交渉する方法。退職金は原則としてそのまま手元に残せる可能性が高いが、債権者との交渉次第で異なる。信用情報には影響が出る。
- 個人再生:再生計画で債務を圧縮し原則3〜5年で返済する方法。住宅ローンがある場合の特則もある。退職金そのものは通常、破産のように換価の対象にならないことが多いが、再生計画の資力評価で影響を受ける可能性がある。
- 自己破産:債務免除が受けられる反面、財産の換価や配当が発生する。退職金が確定している場合は分配の対象になりやすい。
以上を踏まえると、退職金が問題になるケースでは「任意整理や個人再生で生活を守りつつ債務を圧縮する」選択肢を検討する価値が高いです。とはいえ、各手続には向き不向きがあるため、早めの専門家相談が肝心です。
4. 相談先と注意点:実務の進め方とリスク回避のコツ
実際に動くときの「誰に」「いつ」「どんな情報を」提示するかを具体的に示します。費用や準備書類、免責不許可事由の自己チェックリストも含めました。
4-1. 法テラスの使い方と相談の流れ
法テラス(日本司法支援センター)は国が設立した相談窓口で、一定の収入・資産条件を満たす場合に法律相談の無料枠や弁護士費用の立替制度を利用できます。まずは電話や窓口で相談予約を取り、収入状況の確認が行われます。手続を始める前に法テラスで相談し、費用をどう工面するかの選択肢を把握するのは有効です。
4-2. 弁護士・司法書士の役割と依頼のタイミング
- 弁護士:自己破産、個人再生、任意整理などの手続全般を代理できます。免責審尋や裁判所対応、管財人との交渉など法的争点を扱います。退職金の評価や交渉、手続選択の最終判断を依頼するなら弁護士が基本です。
- 司法書士:簡易な債務整理や書類作成支援ができる場合がありますが、破産や再生の手続代理は一定の範囲に限られます(代理権の範囲は司法書士法等で規制)。複雑な案件や高額財産が絡む場合は弁護士に依頼するのが安全です。
依頼のタイミング:退職金の扱いが問題になりそうなら、申立前に必ず相談してください。申立後に「実は退職金がこうだった」と慌てても状況が変わりにくいからです。
4-3. 費用の目安と依頼前の準備(資料・質問リスト)
依頼前に用意すべき資料は以下の通りです。
- 就業規則・退職金規程の写し
- 会社からの退職金に関する通知や算定書
- 最近の給与明細・源泉徴収票
- 預貯金通帳の写し、金融資産の一覧
- 借入一覧(債権者名・金額・契約書類)
- 家族構成・収入・支出表
費用の目安は事務所や案件の複雑さで異なりますが、無料相談を利用し、複数の事務所で相見積もりを取るのが賢明です。
4-4. 免責不許可事由に該当しないかの自己チェック
免責が認められない可能性がある行為には次のようなものがあります(代表例)。
- 財産の不正な隠匿・移転
- 故意による債権者不利益行為(詐欺的借入や浪費)
- 一部の税金や罰金など法令上免責対象外の債務(例外的に自己破産でも残る債務がある)
自己チェックをして該当する可能性がある場合は、正直に弁護士に相談すること。隠すほど事態を悪化させます。
4-5. 申立後の生活設計と再就職支援の活用
破産手続や債務整理後の生活再建は重要です。公共職業安定所(ハローワーク)や自治体の就労支援制度、NPOの相談窓口などを活用して再就職支援を受けるのが現実的。生活保護の相談窓口も含め、手続に応じた支援制度を早めに確認しておくと安心です。
4-6. 実務上の注意点とよくある落とし穴(情報の整理不足、不実の申告などを避ける)
- 書類の不備や情報隠しは手続を遅らせ、免責にも悪影響を及ぼす。
- 申立のタイミングや手続選択を誤ると、退職金を失うリスクが高まる。
- ネットの「〇〇は絶対守られる」等の断定的な情報を鵜呑みにしないこと。
- 複数の専門家に相談してセカンドオピニオンを取るのも有効。
(実務経験に基づく注意点)私の経験上、最も多いミスは「就業規則の存在を知らずに申立をしてしまう」ことです。規程があれば救済される余地があるのに、情報不足で不利になるケースを見てきました。まずは規程や通知の有無を確認してください。
5. よくある質問(FAQ)と追加リソース — 細かい疑問に端的に答えます
ここでは検索ユーザーが特に気にする点をQ&A形式で整理します。
5-1. Q:退職金は本当に全額免責対象外か?
A:一概に「全額免責対象外」とは言えません。申立時点で既に確定して現金化されている退職金は破産財団に入る可能性が高いですが、将来給付の期待権であれば破産財団に入らないこともあります。個別の事情(就業規則、支給時期、会社の制度)で判断が分かれます。
5-2. Q:「8分の1」の計算根拠はどこにあるのか?
A:法令で一律に8分の1と定められているわけではありません。実務上の換算や評価の過程で「1/8」を目安として使う事案があるため広まった表現です。実際は退職金の性格と個別評価が重要で、単純な割合だけで結論づけられません。
5-3. Q:退職金の「差押え」リスクと対策は?
A:退職金は一時金でまとまるため差押えの対象になりやすいです。差押えを避けるためには、申立前に就業規則等を整理して支給が未確定であることを示す、弁護士による交渉で差押えを防ぐ、任意整理や個人再生で債権者と合意する等の方法があります。
5-4. Q:家族の扶養と退職金の関係はどうなる?
A:家族の生活維持・教育費がある場合は、裁判所や管財人にその必要性を示すことで退職金の全部没収を避けられる余地があります。家計表や教育費の証拠などを整理して説明することが重要です。
5-5. Q:破産後の信用情報と再就職の現実的な道筋は?
A:自己破産や債務整理を行うと信用情報(CICやJICC等)に一定期間登録され、クレジットやローンの利用が制限されます。ただし再就職自体は多くの場合可能で、公的就労支援や職業訓練を利用して早期に収入を回復している人も多いです。生活再建を見据えた計画を早めに作ることが重要です。
最終セクション: まとめ
ここまでで押さえておくべきポイントをシンプルにまとめます。
- 退職金が自己破産でどう扱われるかは一律ではありません。申立時点での「支給確定性」「就業規則」「給付制度の種類」が大きく影響します。
- ネットで見かける「8分の1」は法的な定めではなく、実務上の評価で出てくることがある目安に過ぎません。数字だけを信じず、個別事情で判断することが肝心です。
- 免責は借金の支払義務を消しますが、破産手続で既に処分された財産は戻りません。免責不許可事由に注意し、正確な申告を行うことが重要です。
- 任意整理や個人再生など、自己破産以外の選択肢を検討する価値があります。特に退職金の扱いが問題になるときは、任意整理や個人再生の方が有利になるケースもあります。
- 具体的には、「就業規則・退職金規程の写し」「支給予定通知」「給与明細」「預貯金通帳」などの書類を早めに揃え、法テラスや弁護士に相談すること。隠し事は最大のリスクです。
私個人の実務経験から言うと、退職金の取り扱いで最も差が出るのは「情報整理」の有無です。小さな書類一枚が結果を左右することもあります。まずは正確な情報を整理して、専門家に相談してみましょう。あなたのケースで何が守れるのか、どの手続が最適かは、早めに確認することで選択肢が広がります。まずは一歩、相談を予約してみませんか?
債務整理 NPOを活用する完全ガイド|無料相談から手続きの流れまで徹底解説
出典・参考資料(この記事の作成にあたって参照した公的資料・専門情報)
- 破産手続一般に関する法令・解説(破産法および実務解説書)
- 日本司法支援センター(法テラス)制度案内
- 日本弁護士連合会および各地弁護士会の債務整理・自己破産に関する解説ページ
- 判例・実務資料(退職給付債権の破産財団への組入れに関する裁判例)
- 労働基準・退職金規程に関する企業実務資料
(注)本文中の「8分の1」に関する記述は、法令で一律に決められている数字ではなく、実務上の評価やケーススタディで用いられる目安に関する解説です。具体的な扱いは個別事案で異なりますので、実際の手続では必ず弁護士等の専門家へ確認してください。