自己破産と売掛金の実務ガイド:免責・回収・対応の全ポイント

債務整理のおすすめ方法を徹底解説|あなたに最適な選択肢が見つかる債務整理完全ガイド

自己破産と売掛金の実務ガイド:免責・回収・対応の全ポイント

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この記事を読むことで分かるメリットと結論

結論から言うと、自己破産をすると原則として「あなたが持つ売掛金(債権)」は破産財団に組み入れられ、破産管財人の管理下で換価・配当に回される可能性が高いです。ただし、売掛金の種類や成立時期、相手方との契約内容、期限の利益の有無によって回収の可否や配当率は大きく変わります。本記事では、売掛金が自己破産にどう影響するか、免責との関係、回収の現実性、債権者・債務者それぞれの実務的な対応方法まで、具体例と体験談を交えてわかりやすく整理します。読むと、次に何をすべきかがはっきりします。



「自己破産」と「売掛金」──まず知っておきたいポイントと最適な選択肢


個人事業主やフリーランスで売掛金(売上債権)がある状態で債務問題に直面した場合、「売掛金はどうなるの?」「自己破産してもいいのか」「他に選べる方法は?」といった疑問がまず浮かびます。ここでは、売掛金がある場合に考えるべき整理方法(自己破産・個人再生・任意整理など)と、それぞれの向き不向き、費用の目安シミュレーション、弁護士相談に向けた準備まで、実務的で分かりやすく整理します。

注意:以下の費用や手続きの所要期間は事例ごとに大きく変わる可能性があります。具体的な判断と正確な見積りは、個別の事情を確認できる弁護士との相談をおすすめします(多くの法律事務所は初回相談を無料で行っているところがあります)。

1) 売掛金は自己破産でどう扱われるか(簡潔に)

- 自己破産手続では、破産開始時点で持っている「財産(権利を含む)」は破産管財人(裁判所が選任する管理人)の管理・処分対象になります。売掛金(既に発生している回収可能な債権)も基本的に破産財団の一部です。
- したがって、売掛金があると、破産管財人が回収を行い、債権者への配当に充てられます。債務者自身が自由に回収して私的に使うことはできません。
- 売掛金がほとんど無い、または回収見込みがない(実質的に価値が無い)場合は、手続が簡略化される場合(同時廃止)があります。売掛金が一定の価値を有し処分が必要と認められると、破産管財事件(管財事件)となり、管財人が選任されます。

(要点:売掛金は「資産」として扱われるため、自己破産すると通常は手放すことになる)

2) 売掛金がある場合に考える4つの選択肢と特徴

1. 任意整理(私的整理)
- 概要:借入先と個別に交渉して、返済方法を変更(分割・利息カット等)する方法。裁判所を通さない。
- 売掛金の扱い:事業を続けながら売掛金を回収して運転資金に充てられる可能性があるため、売掛金が主な資産で事業継続したい場合に向く。
- 向く人:事業を継続したい、または売掛金を活用して再建できる見込みがある場合。
- デメリット:債権者全員の同意が必要ではない(債権者により条件差が出る)、借金減免は限定的。

2. 個人再生(民事再生の一種)
- 概要:裁判所を通じて借金の一部を原則3年〜5年で分割返済し、残額を免除してもらう方法。住宅ローン特則で持ち家を残せる場合も。
- 売掛金の扱い:事業や売掛金を残して再建を図ることが可能。事業継続を前提にできる点がメリット。
- 向く人:一定の収入や事業継続の見込みがあり、資産(売掛金含む)を維持して再建したい場合。
- デメリット:手続きが裁判所で厳格、要件や最低弁済額がある。

3. 自己破産
- 概要:資産を処分して債権者に配当し、免責許可を得れば法的に借金を免除してもらう方法。
- 売掛金の扱い:破産財団に組み込まれて破産管財人が回収・処分する。事業は終わるか縮小されることが多い。
- 向く人:債務超過で再建の見込みがない、または事業を継続する意思がない場合。
- デメリット:一定の職業制限や信用情報への掲載、売掛金などの資産が没収されること。

4. 特定調停(簡易裁判所の手続)
- 概要:裁判所の調停委員を介して債権者と返済条件を協議する比較的簡易な手続き。
- 売掛金の扱い:裁判所外での調整に近いため、事業継続と売掛金回収が可能なケースもある。
- 向く人:少額の債務や、柔軟に個別交渉したい人向き。

3) どの方法が「最適」か(売掛金のある事業者向けの判断フロー)

- 売掛金が事業の主要な資産で、回収すれば再建(返済・運転資金確保)が見込める → 任意整理か個人再生をまず検討。事業性を残して交渉するのが合理的。
- 売掛金はあるが回収見込みが薄い、または他に資産がほとんどない → 同時廃止の自己破産が短期的に合理的な場合あり。
- 売掛金の金額が大きく、回収すると債権者への十分な配当が見込まれる → 破産管財(管財事件)となり自己破産のコストが高くなるため、個人再生や任意整理と比較して総合的に判断する必要あり。

結論:売掛金があるからといって自動的に「自己破産が悪い」というわけではありません。売掛金を使って事業を立て直せるか、売掛金を回収された場合に残る財産や再就職の見通し、手続きにかかる費用を比較して選びます。これらは個別事情で大きく変わるため、専門家に相談してください。

4) 費用・期間の目安(実務上のシミュレーション)

以下はあくまで一般的な目安で、事務所や裁判所、事件の複雑さにより上下します。正式見積は弁護士に依頼して下さい。

- 任意整理
- 弁護士費用(目安):1社あたり数万円~(合計で概ね5万〜20万円程度が多いケース)
- 手続き期間:数か月(交渉次第)
- 備考:債権者数や交渉の難易度で増減

- 個人再生
- 弁護士費用(目安):30万〜60万円程度(事務所により差が大きい)
- 裁判所手続・書類作成等:別途実費がかかる場合あり
- 手続き期間:6〜12ヶ月程度
- 備考:住宅ローン特則を使う場合手続が複雑に

- 自己破産(同時廃止)
- 弁護士費用(目安):20万〜40万円程度
- 裁判所費用等の実費:少額(数千〜数万円)
- 手続き期間:数か月
- 備考:資産がほとんどない場合に適用

- 自己破産(管財事件)
- 弁護士費用(目安):30万〜60万円程度(事案による)
- 破産管財人への予納金(目安):数十万円程度が要求されることが一般的(事案により差が大きい)
- 手続き期間:半年〜1年以上
- 備考:売掛金など資産がある場合に管財事件となる可能性が高い

具体例(簡易シミュレーション)
- 事例A:売掛金ほとんど無し、個人債務300万円 → 自己破産(同時廃止)を選択。弁護士費用約25万円、裁判所実費数千円、期間3〜6ヶ月。結果:免責で債務清算。
- 事例B:売掛金回収見込み200万円、債務800万円 → 売掛金は資産価値があるため管財事件の可能性あり。管財だと破産手続の費用負担が増える。個人再生や任意整理で事業継続または再建する方が合理的なケースもある。
(※あくまで概算例です)

5) 相談に行く前に揃えておくとよい書類・情報

弁護士相談がスムーズになり、現実的な方針や費用見積りが得られます。
- 売掛金一覧(請求書や納品書、回収予定表)
- 取引先と交わした契約書や注文書
- 銀行口座の通帳(直近数か月分)
- 借入明細(カード、消費者金融、銀行等)
- 家賃・光熱費・家計の収支が分かるもの
- 確定申告書(個人事業主の場合、直近1〜3年分)
- 身分証明書(運転免許証等)
- その他差し押さえや督促状などの通知書

重要な注意点:相談前に売掛金を第三者に譲渡・隠匿したり、他人名義に移したりすることは絶対に避けてください。財産隠匿は重大な問題になります。まず弁護士に相談することが最優先です。

6) 良い弁護士の選び方(ポイントと理由)

- 破産・再生・事業再建の実務経験が豊富か
- 理由:売掛金を含む事業案件は処理が複雑。経験が重要です。
- 事案に合った手続(任意整理/個人再生/自己破産)の選択肢を複数提示できるか
- 理由:一つの解法に固執せず、費用・期間・事業継続性を比較できる弁護士が信頼できます。
- 費用の内訳が明確で、分割払いや成功報酬の有無など柔軟な支払い方法があるか
- 理由:手続き費用の支払いが負担になりがちなので透明性が重要。
- 連絡や説明が明確で、実務対応(税理士との連携、取引先との交渉)が得意か
- 理由:手続中は情報共有が重要。相手に説明できる能力は大切です。
- 無料相談や初回面談で現実的な見通しを提示してくれるか
- 理由:初回相談で「可能性」「最短の道筋」「必要な書類」を示してくれる事務所を選びましょう。

7) 初回の無料相談で必ず聞くべき質問(例)

- 私の売掛金は破産財団に含まれますか?含まれる場合どう処理されますか?
- この状況で自己破産と個人再生、任意整理のどれが合理的ですか?理由は?
- 想定される全体費用(弁護士費用+裁判所費用+その他)を教えてください。支払い方法は?
- 手続きにかかる期間と、事業継続や仕事への影響(職業制限、信用情報への掲載など)は?
- 私が今やってはいけない行動(例:売却、譲渡、勝手な回収等)は何ですか?

8) 最後に:まずは相談を。やってはいけないことを避けて動き出す

売掛金がある場合、自己破産だけでなく個人再生や任意整理で事業を残せる可能性が大きく変わります。一方で売掛金は「資産」として扱われるため、放置または誤った対応(財産隠匿や勝手な譲渡・回収)は後で不利になります。

行動プラン(推奨)
1. まず書類を整理(上記の書類を準備)
2. 早めに債務整理に詳しい弁護士の無料相談を受ける(複数事務所の比較も有効)
3. 弁護士の指示のもとで、売掛金の取扱いや交渉方針を決める

債務整理は早めの判断と適切な手続き選択が重要です。不安なまま手を動かしてしまうと取り返しのつかないことにもなりかねません。まずは無料相談で現状を正確に伝え、見通しと費用を確認してください。あなたの状況に合わせた最善の方法を法律の専門家と一緒に決めましょう。


1. 自己破産と売掛金の基礎知識 — 「まずはここを押さえよう」

自己破産と売掛金についての基本を固めておくと、その後の判断がグッとラクになります。ここでは制度の骨格から、なぜ売掛金が問題になるのかまで噛み砕いて説明します。

1-1. 自己破産の基本的な仕組み

自己破産は、支払い不能になった個人または事業者が裁判所に申し立て、資産を換価して債権者に配当し、残る債務について免責(支払い義務の免除)を受ける手続きです。手続きには「同時廃止」と「管財事件」があり、事業性資産や争点が多い場合は管財事件となり破産管財人が選任されます。重要なのは、破産手続開始決定が出ると財産は原則として破産財団に属するため、個人が自由に管理や処分できなくなる点です。

1-2. 売掛金とは何か・なぜ問題になるのか

売掛金は「商品やサービスを提供したけれど、まだ代金が支払われていない未回収の請求権」です。個人事業主や法人経営者にとっては重要な資金源ですが、自己破産をするとその売掛金は「債権(財産)」として扱われ、破産管財人が回収・管理する対象になります。つまり、自己破産を申請すると自分で回収して自分に入れることが難しくなることが多いのです。

1-3. 事業債権と個人債権の違い

売掛金が「事業のために発生した債権」か「個人的な債権」かで扱いに差が出ます。事業債権は破産財団の中心になることが多く、管財事件では積極的に回収されます。一方、個人的に知人に貸したお金などの債権も財産であれば破産財団の一部になります。事業用と個人用の区別が曖昧な場合、整理を誤ると回収可能性に影響するため注意が必要です。

1-4. 破産手続の大まかな流れ(申立て→開始決定→管財人→配当→免責)

典型的な流れは次のとおりです。①破産申立て(債務者または債権者が裁判所に申請)→②裁判所の開始決定(同時廃止か管財かを判断)→③管財人が選任されれば資産の調査・換価→④債権届出の受理・債権者集会→⑤換価資産を配当→⑥免責審尋と免責決定(免責されれば法的債務が消滅)。売掛金は②以降に管財人が管理対象として扱います。

1-5. 売掛金の扱いが争点になる典型パターン

よくある争点は「売掛金が現実に回収可能か」「売掛金成立前後の行為が不当利得や偏頗弁済(特定債権者にだけ支払い)にあたらないか」「債権譲渡や担保があるか」などです。例えば、破産直前に特定顧客から入金があった場合、それが偏頗弁済として取り消され債権者に返還される可能性があります。

1-6. 免責の要件と売掛金の関係の基本的な整理

免責とは個人の債務を免れる処分ですが、免責がいても「破産財団に属する財産(売掛金含む)」は換価され債権者に分配されます。売掛金が免責後も個別に請求可能かどうかは、免責前に破産手続で処理されたか否か、債権が第三者に譲渡されているかなどで変わります。つまり、免責は債務者の支払義務を消す一方で、売掛金という財産の処理は別の問題として扱われる点がポイントです。

2. 売掛金が自己破産にどう影響するか — 「回収見込みと順位を知る」

売掛金は「回収できるか」「どの程度配当されるか」「債権者としてどう動くべきか」が問題です。ここでは法律上の分類、回収の順序、実務例を交えて解説します。

2-1. 免責と売掛金の関係の基本

破産手続開始後、売掛金は破産財団の一部となります。債権者が売掛金を持つ側(債権者=あなた)で、相手(債務者)が破産する場合は、あなたの持つ売掛金は「破産債権」として扱われます。つまり、あなたの債権は一般債権として他の債権者と同列に配当を受ける可能性がありますが、満額回収される保証はありません。

2-2. 破産債権の分類と回収の順序

破産手続では債権が「優先債権」「一般(普通)債権」などに分類されます。一般に、税金や従業員の賃金・退職手当など一定の優先債権が優先され、その後に一般債権が配当されます。売掛金は通常「一般債権」に該当するため、優先債権の残高が大きければ配当はゼロに近くなる可能性があります。

2-3. 期限の利益喪失と回収の現実性

「期限の利益」とは債権者が定められた期日まで支払いを求めないという権利です。破産申立てや契約条項によって期限の利益が喪失すると、売掛金は即時弁済請求可能になり、破産管財人が優先的に回収するケースがあります。しかし、破産債務者の支払い能力が無ければ結局回収は困難です。実務では、売掛金の発生元(相手先)の財務状況や支払履歴を精査して回収可能性を見積もります。

2-4. 優先債権・一般債権の違いと影響

先述のとおり、優先債権があると一般債権の配当が圧迫されます。例えば、従業員給与や税金の未払いがある会社が破産した場合、売掛金を持つ取引先は後回しになり、配当率が低くなることが多いです。したがって、債権者としては早期に債権届出をし、必要に応じて破産管財人との接触を図ることが重要です。

2-5. 実務的なケーススタディ(傾向)

実務では、売掛金が比較的確実に回収できると判断されるケース(例えば、相手先に確かな資産や支払能力がある、担保が付いている等)では管財人も回収に注力します。逆に、相手先の資産がほとんど無く、多くの優先債権が先に立っている場合は配当ゼロとなることも珍しくありません。実際の配当率は事案ごとに大きく異なります。

2-6. よくある誤解と正しい認識

誤解例:「自己破産すれば売掛金は全て消える」→正しくは、売掛金は破産財団の一部として処理され、債権者への配当対象になります。誤解例:「免責が出れば相手に請求できる」→免責は債務者の支払義務に関する処分であり、債権(売掛金)の処理は破産手続で行われる別問題です。

2-7. 売掛金をめぐる争点を避ける準備

争点を避けるためには、契約書の整備(支払期限、担保、譲渡禁止や譲渡承諾の条項の有無)、証拠となる納品書・発注書・請求書・履行の記録を整理しておくことが有効です。また、相手が支払困難な兆候を示したら早めに相談することで、偏頗弁済や不当な行為を避ける対応が可能になります。

2-8. 法的リスクを最小化する事前対策

事前対策としては、与信管理(相手先の与信調査)、分割請求や前受金の利用、債権保全(根抵当権・保証人の確保)などが考えられます。既に売掛金が発生している場合は、速やかな法的回収手続き(支払督促・仮差押え等)を検討することも一つの選択肢です。いずれにしても、専門家に相談して最適な手順を取るのが安全です。

3. 自己破産を検討している人の具体的な道筋 — 「実務でどう動くか」

自己破産を選ぶ前に、どのように準備し、どの選択肢を取るべきかを明確にしておくと後悔が減ります。ここでは具体的なステップと判断ポイントを示します。

3-1. 事前整理リストの作り方

まず、全債権・全債務を一覧化します。重要なのは売掛金の発生日時、相手先、契約内容、支払期限、証拠書類(請求書・納品書・発注書)、担保の有無、過去の支払履歴です。次に、優先債権(税金・社会保険料・従業員給与等)や譲渡・担保設定の有無を確認します。この整理が、管財人や弁護士と話す際の基礎情報になります。

3-2. どの手続きを選ぶべきかの判断ポイント(任意整理 vs. 自己破産)

任意整理は債権者と交渉して返済条件を見直す方法、自己破産は法的に債務を整理する途径です。売掛金が大きく、事業継続の見込みがあるなら任意整理や民事再生(個人再生)を検討します。一方で債務総額が多く返済の見込みがない場合は自己破産が現実的です。事業用売掛金が大量にある場合は、管財人的管理の必要性も考慮して弁護士に相談します。

3-3. 免責の可否を左右する要因と対策

免責が不許可になる要因には、詐欺的な借入、浪費、財産の隠匿、重要事実の不実記載などがあります。売掛金に関しては、破産直前の偏頗弁済や債権譲渡の時期・方法が問題視されることがあります。対策としては、誠実に財産・債権を開示し、怪しい処分は避けることです。早めに弁護士と意思疎通し、説明資料を整えておくとよいでしょう。

3-4. 申立て費用・準備期間の目安

自己破産の申立てにかかる費用は、裁判所手数料のほか、弁護士費用や管財人費用(管財事件の場合)があります。手続き期間は、同時廃止なら数か月、管財事件なら半年〜1年以上かかることが珍しくありません。特に事業関連の債権が多い場合は管財事件になりやすく、その分の準備と時間を見込む必要があります。

3-5. 売掛金の債権者としての対応方法

あなたが売掛金の債権者(相手が破産)の立場なら、まずは破産手続の情報を入手(裁判所の破産手続開始決定書等)し、期限内に債権届出を行うことが重要です。管財人と連絡を取り、取引の事実証明(請求書、納品記録等)を提出して回収交渉に加わります。早めに動くことで配当の可能性が多少高まるケースもあります。

3-6. 弁護士・司法書士への依頼メリットと依頼の流れ

弁護士に依頼すると、破産申立ての戦略立案、債権者への対応、管財人との交渉、偏頗弁済の問題対応などを任せられます。司法書士は簡易裁判所での手続きや登記関連が得意ですが、破産管財事件のように複雑な事案では弁護士が主に対応します。依頼の流れは、初回相談→委任契約→証拠書類の整理→申立書作成→裁判所提出、が一般的です。

3-7. 私の体験談:友人Aのケースから学んだ教訓

私の知人(個人事業主)は、売掛金が数百万円残る状態で自己破産を選択しました。事前に請求書や納品記録をきっちり準備しておいたため、破産管財人とのやり取りがスムーズになり、債権者集会でも誤解を招かずに済みました。逆に、証拠が不十分な別の案件では債権の存在を証明しきれず配当が認められない事例も見ました。ポイントは「記録を残すこと」と「早めに専門家に相談すること」です。

3-8. 事業再生との比較ポイント

事業を続けたい場合は民事再生や会社更生といった再生手続を検討します。再生手続では通常、一定の比率で弁済計画を立てて事業継続を目指しますが、要件やコストが大きく異なります。売掛金が将来の売上に直結する場合は、再生手続での処理が有利なこともあります。選択肢ごとのメリット・デメリットを弁護士と比較検討してください。

4. 売掛金を回収するための現実的な戦略 — 「回収の可能性を高める技」

回収がゼロにならないように、現実的で実務的な戦略を持つのが大切です。ここでは債権者・債務者双方の立場で有効な手法を紹介します。

4-1. 破産管財人との交渉のポイント

破産管財人は財団最大化が目的です。債権者側は、請求の根拠となる書類、納品証拠、取引履歴を整理して早期に提出すると信頼感が増します。加えて、債権の独自性(優先権、担保の有無)を明確にすることで、管財人の回収優先度を上げられる場合があります。冷静かつ事実ベースで交渉するのがコツです。

4-2. 回収可能性を高める事前準備

重要なのは証拠の整備と情報収集。請求書、納品書、受領書、メールのやり取り、発注書などを時系列で整理しておくと、回収交渉の際に有利になります。また、相手の財務状況(資産・負債・担保の有無)を把握しておくことも有効です。ビジネス実務として、初めから与信管理や担保設定を行っておくことが望ましいです。

4-3. 合意・和解の可能性と注意点

破産手続前や手続中に和解で回収を図るケースがあります。和解の際は「偏頗弁済(特定債権者にのみ有利な支払い)」にならないよう注意が必要です。管財人や裁判所の承認が必要になることもありますし、和解条件を曖昧にすると後で取消されるリスクがあります。和解書は弁護士にチェックしてもらうのが安全です。

4-4. 回収が難しい場合の代替戦略

現金での回収が難しい場合、代替案として一部回収+将来の取引での値引き、物品引取、債権譲渡(債権をファクタリング等で売却)などがあります。特にファクタリングは早期現金化には有効ですが、手数料や譲渡条件を慎重に評価する必要があります。破産手続中に無断で譲渡すると問題になる場合があるため、事前に確認が必要です。

4-5. 債権譲渡・譲渡制限などの法的手段

契約に「譲渡禁止特約」がある場合、債権譲渡が制限されることがあります。ただし、譲渡禁止特約は第三者に対抗するための要件など複雑なルールが絡みます。実務では、売掛金を早期に現金化したい債権者がファクタリングを利用するケースも増えています。法的リスクを回避するには、契約書の条項を確認しておきましょう。

4-6. 実務的なケーススタディ(回収成功事例)

ある中小企業A社は、売掛金に対して事前に有効な保証人を付けており、相手先が破産した際に保証人から回収できたため損失が最小限に抑えられました。別の事例では、B社が請求書や納品記録を詳細に保存しており、管財人に対して迅速に証拠を提示したため配当を受けられた例があります。共通点は「事前準備」と「証拠の有無」です。

4-7. 免責後の回収の可能性の現実(ケース別解説)

免責決定が出た後は、一般に破産手続で処理された債権について個別に完全回収するのは難しくなります。ただし、売掛金が第三者(譲渡先)に既に譲渡されていた場合や、免責の対象外となる特別な事情がある場合は別途請求が可能なケースもあります。個別事情で判断が分かれるため、免責後の対応は専門家に相談するのが安全です。

5. よくある質問と注意点 — 「読者が本当に知りたいことに答えます」

ここでは検索されやすい疑問点をピンポイントで解説します。実務でよくある不安に対して、わかりやすく答えます。

5-1. 免責不許可事由と売掛金の関係

免責不許可事由とは、免責が認められない事情(例:債務を隠した・財産を不正に処分したなど)です。売掛金に関連する場合、破産直前に特定債権者にだけ優先的に支払った(偏頗弁済)ケースや、債権を隠していた場合に免責の判断に影響することがあります。したがって、売掛金に関する処理は透明に行うことが重要です。

5-2. 税務上の取扱いと申告のポイント

売掛金の貸倒や債権放棄には税務上の取り扱いが関わります。自己破産で債務が免責される場合でも、税務上の損金処理や貸倒処理は考慮が必要です。特に法人税や消費税の関係で処理が異なる場合があるため、税理士に相談して正しい申告を行うことが大切です。

5-3. 企業再生と破産の違い

企業再生(民事再生や会社更生)は事業を継続しつつ債務を圧縮する手続き、破産は原則として事業を止めて資産を換価する手続きです。売掛金が将来の収益に繋がる重要な資産であれば、再生手続の方が有利なことがあります。どちらが適しているかは資産構成や債権者構成で変わります。

5-4. 家族・配偶者への影響と請求の分離

個人の自己破産で家族の財産や配偶者の債務が自動的に消えるわけではありません。共同名義の財産や連帯保証がある場合は影響があります。売掛金が法人名義であり個人の申立てで別にされている場合は分離されることもありますが、事案により複雑になるため注意が必要です。

5-5. 実際の手続きの流れを踏まえた準備チェックリスト

準備チェックリストの例:
- 全請求書・納品書の整理(時系列)
- 取引先とのメール・発注書の保存
- 担保・保証の有無の確認
- 債権者一覧と優先債権の整理
- 弁護士・税理士への相談予約
- 裁判所提出書類のコピー保管
これらを事前に整えておくと手続きがスムーズになります。

5-6. 専門家相談のタイミングと相談先の選び方

債務状況に不安を感じたら早めに弁護士(破産・債務整理を扱う)に相談するのが良いです。法テラス(日本司法支援センター)は収入基準を満たす場合に相談や費用補助の案内を受けられます。司法書士は手続きの一部をサポートできますが、複雑事案や管財事件では弁護士が適任です。

最終セクション: まとめ — 「まず今日何をすべきか」

ここまででお伝えした要点を短く整理します。行動に移しやすいチェックリストも付けました。

主なポイント
- 自己破産を申請すると売掛金は破産財団に組み入れられ、破産管財人が管理・換価して配当することが一般的です。
- 売掛金の回収可能性は、相手先の資産状況、優先債権の有無、証拠書類の有無によって大きく変わります。
- 事前に請求書・納品書・契約書を整理し、証拠を整えることが回収率を左右します。
- 事業継続を望むなら民事再生などの選択肢も検討し、弁護士と早めに相談することが重要です。
- 債権者側は債権届出や管財人との連絡を速やかに行い、回収のチャンスを逃さないこと。

今日やるべき3つのこと
1. 売掛金に関する書類(請求書・納品書・メール)を一式まとめる。
2. 相手先の最近の支払状況や資産情報を可能な範囲で確認する。
3. 弁護士または法テラスに早めに相談して、具体的な手順を相談する。

私の経験から言うと、「記録を残す」「早めに相談する」だけで解決の幅がぐっと広がります。もし今、不安を抱えているなら、まずは証拠の整理から始めてみてください。必要なら専門家と一緒に次の一手を決めましょう。
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出典・参考(本文中では触れていない公式情報等)
1. 破産法(法令)
2. 裁判所:「破産手続きの案内」(裁判所ホームページの解説記事)
3. 法テラス(日本司法支援センター):自己破産・債務整理に関する相談案内
4. 日本弁護士連合会:債務整理・破産に関する一般的な解説ページ
5. 実務書籍・弁護士による解説(破産管財に関する実務書)

(注)本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別事案の法的判断は事実関係により異なるため、具体的な対応は必ず弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。

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