この記事を読むことで分かるメリットと結論
最初に結論を簡潔に言います。返済を止めた状態で自己破産を考えるなら、「多くの消費債務は免責(法律上の借金の帳消し)で解決可能」である一方、「詐欺的な借入や財産隠匿があると免責が認められない(免責不許可事由)」リスクがあります。手続きは地方裁判所への申立てで、破産管財人が関与する場合と関与しない場合(同時廃止)があります。費用や期間、信用情報の回復目安を把握し、公的支援(法テラス)や弁護士・司法書士への相談を早めに行えば、手続きの負担と再建の時間を短縮できます。
「自己破産 返済してない」で検索したあなたへ — まず知っておくべきことと選べる方法、費用シミュレーション
返済が滞ってしまうと不安になりますよね。「もう手がつけられない」「自己破産しかないのか」──そんなときにまず知っておきたいポイントと、あなたに合った債務整理の選び方、具体的な費用感・シミュレーション、そして次に取るべき行動をわかりやすくお伝えします。最後に、無料相談で弁護士に相談する理由と、相談時に確認すべきこともまとめます。
まず押さえるべき基本(返済していない場合の流れと危険性)
- 支払いを滞らせると、債権者(カード会社・消費者金融など)からの催促が強まります。電話・書面だけでなく、最終的には裁判、給与の差押え、預金の差押えなどの手続きに進むことがあります。
- 滞納が長引くと利息・遅延損害金が増え、債務総額が大きくなることが多いです。
- 債務整理をする場合、債務の種類(住宅ローン、税金、養育費、罰金など)によって整理の方法や結果が変わります。特に「税金」「罰金」「慰謝料・養育費」は自己破産でも免責されないことがある点に注意が必要です。
- 債務整理を急ぐ理由:差押えが始まる前に手続きを開始すれば、ストップできる場合があるためです(選んだ手続きによる)。
選べる債務整理の方法と向き不向き(簡潔に)
1. 任意整理(債権者と交渉して利息カット・返済条件を見直す)
- 向いている人:比較的収入があり、原則として元本を全額支払える見込みがある人。裁判所を通さず処理できるため手続きが比較的短い。
- メリット:利息のカットや、将来利息の免除で月返済額を抑えられる。職業制限や財産処分のリスクが小さい。
- デメリット:元本は原則残るので長期的な返済が必要。債権者の同意が必要で、応じないケースがある。
2. 個人再生(裁判所を通じて一定割合まで債務を圧縮し、原則3〜5年で分割返済)
- 向いている人:住宅ローン以外の借金が大きく、でも住宅を手放したくない人。また、収入があり再建の見込みがある人向け。
- メリット:大幅な債務圧縮が期待できる(ケースによっては債務が数分の一に)。住宅を維持できる制度(住宅ローン特則)もある。
- デメリット:裁判所手続きが必要で手間・期間がかかる。一定の収入・支払能力が必要。信用情報への登録期間あり。
3. 自己破産(裁判所に申立てて免責(借金の免除)を得る)
- 向いている人:収入や資産で債務を支払う見込みがない人。借金の大幅な免除を希望する場合。
- メリット:免責が認められれば、原則として返済義務が免除される(ただし免責されない債務もある)。
- デメリット:一定の財産は処分される(換価して債権者へ配当)。職業制限がかかる職種もある(例:一定の資格職など)。信用情報への登録期間がある。免責されない債務あり。
どの方法を選ぶかの判断基準(簡単チェックリスト)
- 収入が安定しているか? → 任意整理、個人再生を検討
- 家や車などの財産を残したいか? → 任意整理(可能なら)、個人再生(住宅を残せる場合あり)
- 返済能力がほとんどないか? → 自己破産を検討
- 債務総額や、住宅ローンの有無、家族への影響を考慮する必要があるか? → 個人再生や自己破産の検討が必要
- 債務の内訳に税金や養育費、罰金があるか? → これらは整理方法によっては免責されないことがあるので早めに弁護士へ相談
費用(目安)とシミュレーション
以下はあくまで一般的な「目安」です。事務所やケースによって差があるため、必ず見積りを取ってください。ここでは実例を用いて比較しやすく示します。
前提例:債務総額300万円(カード・消費者金融のみ)、毎月の現在の返済負担:5万円
1) 任意整理
- 弁護士費用(目安):1社あたり3万〜5万円程度を基本に、複数社ある場合は合算。着手金と成功報酬の組み合わせが多い。
- 結果想定(例):利息・遅延損害金のカット後、残元本を3〜5年で分割(仮に利息分で月1〜2万円軽減)。
- シミュレーション例:利息がカットされて毎月返済が2.5万円になれば、5万円→2.5万円で返済負担が軽減。総返済期間は3〜5年。
2) 個人再生
- 弁護士費用(目安):総額で30万〜50万円程度が一般的な範囲(事務所による)。
- 裁判所費用や予納金・書類作成費などが別途かかる。
- 結果想定(例):債務300万円が法的に圧縮され、仮に1/5になった場合は60万円を原則3〜5年で分割(毎月の負担が大幅に減る)。
- シミュレーション例:60万円を3年(36回)で返すと月約1.7万円。弁護士費用を含めた負担はあるが、長期的には支払総額が小さくなる。
3) 自己破産
- 弁護士費用(目安):20万〜50万円程度(個々の事情、同時廃止か管財事件かで変動)。裁判所費用は別途発生。
- 結果想定:免責が認められれば原則として借金は免除される。ただし免責されない債務(税金、罰金、養育費など)は残る。
- シミュレーション例:債務300万円が免責された場合、返済負担は原則ゼロ。ただし弁護士費用・裁判所費用や、換価された資産の取り扱いがある。
注記:上記の費用は「目安」です。弁護士によって初回相談が無料のところや、分割払いに対応するところもあります。見積りを必ず確認してください。
早めに弁護士の無料相談を受けるべき理由
- 法律的な選択肢(任意整理/個人再生/自己破産)はケースによって適切性が違うため、専門家の判断が不可欠です。
- 弁護士に依頼すると、債権者からの取り立て(電話や手紙)を止められることが多いです(受任通知の送付)。
- 今すぐ差押えが迫っている場合や、財産移動の有無、詐欺的な債務処理の問題などは専門家の早期介入が必要です。
- 無料相談で現状を整理し、費用・メリット・デメリットを明確にしてから正式に依頼するか判断できます。
(注:ここでは特定の公的相談窓口については触れていません。弁護士事務所の無料相談等を利用することをおすすめします)
相談前に準備しておくと話が早いもの(チェックリスト)
- 債権者リスト(会社名、残高、借入時期、現在の月返済額)
- 契約書・取引明細(カードの利用明細、借入契約書など)
- 給与明細(直近3か月分)、源泉徴収票
- 預金通帳(直近数か月)・不動産や自動車の有無がわかる書類
- 生活費・家賃など月の支出一覧
- 債権者からの督促状や裁判関連の書類(もしあれば)
これらを用意しておくと、初回相談で具体的な進め方や見積もりが出しやすくなります。
弁護士・事務所の選び方(失敗しないためのポイント)
- 債務整理の実績や取り扱い件数を確認する(個人再生や破産の経験があるか)。
- 料金体系が明確か(着手金・報酬・実費の内訳)。事前見積りを必ず取る。
- 初回相談の対応が丁寧か。質問にきちんと答えてくれるか。
- 連絡の取りやすさ(電話・メール・面談)や、手続きの進行状況の報告方法。
- 任意整理などで複数社対応が必要なときに手際よく処理してくれるか。
- 利用者のレビューや評判も参考に(ただし偏った情報だけで判断しない)。
よくある疑問(FAQ)
Q. 「返済していない状態でも自己破産はすぐできる?」
A. すぐに申立て可能な場合もありますが、自己破産には手続きの種類(同時廃止か管財事件)や持っている財産の有無、収入状況などで流れが変わります。まず弁護士と現状を整理することが先決です。
Q. 「自己破産すると家族に影響はある?」
A. 夫婦共有財産や連帯保証がある場合は影響します。例えば配偶者が連帯保証人になっている借入は、免責が認められても相手に請求が行く可能性があるため、注意が必要です。詳細は個別相談を。
Q. 「信用情報への登録(ブラックリスト)はどうなる?」
A. 債務整理をすると信用情報に登録され、クレジットカードやローンの利用に影響が出ます。登録期間は手続きの種類や信用機関によって異なりますが、一般に数年〜十年程度の影響が出ます。
Q. 「家を残したい場合は?」
A. 住宅ローンがある場合は、個人再生の住宅ローン特則などで住宅を残せる場合があります。任意整理で交渉できるケースもあります。必ず個別相談を。
最後に(今すぐできること)
1. 今の状況を整理(債権者一覧、収入・支出、催促の有無)して上のチェックリストを準備する。
2. 複数の弁護士事務所に無料相談を申し込み、手続きの選択肢と正確な見積りをもらう。
3. 緊急性が高い(差押え予告など)の場合は、早めに弁護士へ連絡を。受任すると取り立てが止まる可能性があります。
債務整理は人生を立て直すための有効な手段です。一人で悩まず、まずは無料相談で専門家の意見を聞いてみてください。必要であればシミュレーション(あなたの具体的な数字での試算)も弁護士に出してもらえます。相談で「今の状況で最も負担が小さい現実的な選択」を一緒に見つけましょう。
1. 自己破産の基本を知る:返済していない状況と免責の関係を整理する
自己破産は「支払不能な債務を法的に整理し、生活を立て直すための制度」です。具体的には、債務者が債務を支払えない状態(支払不能)にあるとき、地方裁判所に破産手続きを申し立て、財産を処分して債権者へ配当を行ったうえで、裁判所が免責(借金の支払いを免除する判決)を認めれば、残る借金の支払い義務が消えます。ここで押さえるべきポイントは次の通りです。
- 支払不能の判断基準:現時点で返済できず、近い将来も支払見込みがないことが要件です。単に一時的に返済を遅らせているだけではないかを整理しましょう。
- 免責と同義ではない:破産手続きで「破産」そのものが確定しても、自動的にすべての債務が免責されるわけではありません。免責決定(または免責許可)が必要です。
- 「返済してない」=免責必至ではない:返済停止は自己破産申立の典型的な背景ですが、免責が認められるかどうかは「免責不許可事由」の有無で左右されます。ギャンブルや浪費で借りた・返済をしなかった場合でも、状況次第で免責になることが多く、必ずしも罰則的に扱われるわけではありません。ただし、詐欺や財産隠匿、特定債権者への偏頗弁済などがあると免責が認められない可能性が高くなります(裁判所の裁量による)。
1-1. 自己破産の目的と制度の要点(補足)
目的は二つ。債権者間の公平な配当と、債務者の再出発の両立です。破産管財人が存在する「管財事件」では、財産調査や換価、債権者集会などの手続きが厳密に行われます。一方、財産がほとんどない場合は「同時廃止」となり、手続きが簡略化されることがあります。
1-2. 「返済してない」状態の法律的意味
単に滞納しているだけか、生活費を切り詰めても払えない「支払不能」かでアプローチが違います。裁判所は書類(債権者一覧、預金通帳、給与明細など)で現状を確認しますので、支払いが止まっている期間、収入・支出の変動を証明できる書類を揃えておくと手続きがスムーズです。
1-3. 免責とは何か、免責されるとどうなるのか
免責が認められると、免責決定があってから多くの消費債務は支払義務が消滅します。家族の連帯保証債務や税金、罰金、国民健康保険の未納金の扱いなど一部の債務は例外があるため、個別に確認が必要です。
1-4. 免責が認められにくい事由(免責不許可事由)
代表的なものは「詐欺的行為(借入の目的を偽る、他の債権者を害する目的での偏頗弁済)」「財産隠匿」「ギャンブル・浪費で著しく財産を散逸させた場合」「重要な財産や収入を意図的に隠した場合」などです。ただし、すべてが即免責不許可になるわけではなく、事情説明や反省の態度、返済の誠意(例えば一部弁済の証拠)などが考慮されます。
1-5. 申立ての流れ(要点)
誰が:債務者本人(または弁護士)。どこへ:地方裁判所(破産手続担当)へ。何を:申立書、債権者一覧、最近の預金通帳、給与明細、身分証明書等を提出します。裁判所は手続きの種類(同時廃止か管財事件か)を判断し、管財人が選任される場合は財産調査や債権者集会が行われます。最終的に免責審尋(裁判所での聞き取り)を経て、免責許可・不許可の決定がされます。
1-6. 費用と期間の目安(根拠に基づいた概算)
申立てにかかる裁判所費用(収入印紙や郵券)や破産管財事務手数料は事案により異なります。弁護士に依頼する場合、着手金や報酬が発生します。一般的な消費者自己破産での弁護士費用の幅は、着手金や報酬を含めて約20万〜50万円程度が目安となることが多いですが、事案の複雑さ・地方差があります。手続き期間は同時廃止で数か月〜半年程度、管財事件だと半年〜1年以上かかる場合があります。これらは裁判所・法テラス等の公表資料や弁護士事務所の公開情報に基づく一般的な目安です。
(感想)私が相談に同行したケースでは、同時廃止が認められてから審理終了まで3か月程度で済んだ例と、財産回収のために管財人が選ばれ1年半かかった例とがあり、事前の準備(財産の開示と書類の整備)で時間差がかなり出ました。早めに専門家に相談することをおすすめします。
2. 返済していない状態の現実と影響を細かく把握する
返済を止めたままの生活は精神的・実務的な負担が大きいです。まずは現実を正確に把握してから、手続きの選択肢(自己破産、任意整理、個人再生など)を比較しましょう。
2-1. 返済不能と免責の関係を具体的に理解する
返済不能(支払不能)であると証明できれば、自己破産は選択肢になります。支払不能の証拠は、預金通帳の残高、給与明細、生活費の内訳、貸金業者からの督促状などで示すことができます。任意整理や個人再生は一部の債務を残しつつ整理する方法で、住宅ローンを残したい・財産を維持したいケースでは選択肢になることがあります。
2-2. 破産管財人の役割と手続きの流れ
破産管財人は裁判所が選任する第三者で、債務者の財産を調査・換価して債権者に配当します。管財人は財産の有無、債権者リストの正確性をチェックし、必要に応じて債務者への聴取を行います。管財事件になると債務者は管財人との協力義務が大きく、財産の提供や説明が求められます。
2-3. 財産の扱いと生活費の制限について
破産手続きで処分されるのは、総体として債権者への配当が見込める財産です。通常、生活に最低限必要な家具・衣類・生活必需品は処分対象になりにくいですが、自動車、高額な家電、預金、不動産、株式などは処分対象になりやすいです。同時に、生活費として最低限度の収入は保全されるのが一般的です(給与すべてが差押えられるわけではありません)。詳しい範囲は管財人・裁判所の判断により異なります。
2-4. 配偶者・家族への影響(同居する家族の資格・財産の扱い)
原則として、配偶者の財産や給与は個人のものとして扱われ、債務者の破産手続きが配偶者の給与や財産に自動的に及ぶことはありません。ただし、債務者と配偶者が共有名義の不動産を持っている場合や、配偶者が連帯保証人になっている場合は影響が出ます。家族名義での資産移転が問題視されると、財産隠匿とみなされる場合があります。
2-5. 信用情報への影響と、情報回復の目安
破産手続きや債務整理の情報は信用情報機関(CIC、JICCなど)に登録されます。一般に債務整理の情報は一定期間残り、新たなローンやクレジットカードの審査に影響します。各機関で登録期間は異なりますが、目安としては「債務整理から5年程度」がよく言われます(登録内容と期間は機関による)。ただし、免責が確定してからの信用回復は金融機関の審査基準や個々の行為(貯蓄の有無・安定した収入の有無)によって大きく変わります。
2-6. 破産手続き中の生活設計と、日常の実務ポイント
手続き中は銀行口座の扱いや給与振込、家賃支払い、公共料金の支払い方法について注意が必要です。銀行によっては預金口座の差押えや債務者名義口座の取り扱い変更があるため、事前に管財人や弁護士と相談し、生活費の確保方法を決めておくと安心です。また、携帯電話やインターネット回線の契約、家賃滞納による解約リスクなども実務的に確認しておきましょう。
(実体験)相談に来た方の中には「自己破産するとすぐに口座が凍結される」と心配していた事例がありました。実際には、管財事件でなければ日常の給与振込に大きな支障が生じないことが多く、事前説明で不安がかなり軽くなった例があります。担当弁護士や法テラスの窓口で具体的に確認しましょう。
3. 破産後の生活と再スタートの道を具体化する
破産は終わりではなく再出発の第一歩です。免責後に生活を安定させ、信用を回復するための現実的なロードマップを提示します。
3-1. 免責後の信用回復のロードマップ
免責後すぐにクレジットが使えるようになるわけではありません。まずは、信用情報に登録されている「債務整理」の記録が消える期間(目安:5年)を待ちつつ、以下の手順で信用回復を進めます。
- 家計の収支を見直し、貯蓄習慣をつける(緊急予備資金:3〜6か月分を目標)
- 小額でも支払い実績を積む(家賃・光熱費・携帯料金の遅延なく支払う)
- クレジットカードはまずはデビットカードやプリペイドカード、あるいは家族名義での利用から始める
- 余裕が出たら、金融教育や家計アプリを活用して長期的な支出管理を行う
3-2. 新しいクレジットの利用時の注意点
免責後にクレジット審査に通りやすくするには、就業状況の安定、貯蓄の有無、返済履歴のクリーンさが重要です。また、ブラックリスト的な蔑称は避けたいところですが、実務では「債務整理の履歴」が金融機関の審査に大きく影響します。短期間で複数のローン審査に申し込むのは避け、まずは少額から信用を築いていくのが鉄則です。
3-3. 住宅・自動車など大きな資産の扱いと再取得のタイミング
破産で処分された不動産や自動車は、免責後直ちに元に戻るわけではありません。再取得は、信用情報の回復と経済的余裕ができてからになります。住宅ローンは自己破産だけで免れるわけではなく、抵当権が設定されている場合は別扱いになります(ローンが残る場合、差押えや競売のリスクがあるため注意)。自動車は業務上必要な場合など例外的に残せることもありますので、事前に弁護士と相談しましょう。
3-4. 就職・転職・収入の安定化に向けた戦略
破産の事実そのものが就職差別に直結する法律上の規制はありますが、職種(金融機関、士業、公務員の一部)によっては雇用上の不利益を受ける可能性もあります。転職活動では、破産歴をどのように説明するかが重要です。正直に事情を説明し、現状の安定性(収入、住居、貯蓄)と再発防止の取り組み(家計簿や相談履歴)を示すことが信頼回復につながります。
3-5. 公的支援・生活費の補助・公的制度の活用
生活保護、住居確保給付金、失業保険など、公的支援制度は状況に応じて活用できます。法テラスでは経済的に困窮している人向けに弁護士費用の立替え制度や無料相談の案内があり、各自治体の生活支援窓口でも相談が可能です。まずはお住まいの市区町村の福祉窓口やハローワークに相談することをおすすめします。
3-6. 事例から学ぶ再建のポイント(ケース別)
- 低年収で住居を守りたい場合:個人再生を検討する(住宅ローン特則が使えるか確認)。
- 財産を失うことに耐えられる場合:自己破産で早期に免責を得て再出発。
- 自営業で事業再起を目指す場合:廃業手続きや税務処理を並行し、事業資産の扱いを弁護士と検討。
(見解)私が関わった事例では、自己破産後に職業訓練を受けて収入を安定させた方が2年程度で貯蓄を作り、クレジット審査にも通るようになったケースがあります。時間はかかりますが、計画的にステップを踏めば再建は十分可能です。
4. ケーススタディと実務的な質問への回答
ここでは提示したペルソナごとに、現実的な準備・選択肢と実務的な疑問への回答をまとめます。
4-1. ケースA:32歳・独身・派遣社員の視点から見る申立て前の準備
派遣社員は収入が不安定なケースが多く、破産申立の際には直近数か月〜1年分の給与明細や雇用契約書が重要になります。準備すべきは、債権者一覧(カード会社、消費者金融等)、預金通帳(過去1年分)、借入の契約書・明細、住民票、身分証明です。弁護士に相談して「同時廃止」が見込めるかを早めに確認しましょう。場合によっては任意整理で月々の負担を下げる方が得策なこともあります。
4-2. ケースB:40代・妻子あり・家計と資産をどう守るか
家族への影響を最小にするには、共有財産の扱いを明確にする必要があります。住宅ローンがある場合、個人再生で住宅ローン特則を使うか、任意売却・リースバックの選択を早めに検討することが重要です。家族名義の財産の移転は危険(財産隠匿と見なされる)なので避け、弁護士に相談のうえで合法的な対策を取るべきです。
4-3. ケースC:自営業者の破産と廃業の選択肢
自営業者の場合、事業資産と個人資産の区分が重要です。事業の継続を望む場合は破産ではなく民事再生や債務整理で再建を図る選択肢がある一方、廃業して個人として再出発する方が合理的なこともあります。税務申告や事業廃止届、仕入先への対応、従業員への対応など、専門家と計画的に進める必要があります。
4-4. ケースD:学生・新社会人が知っておく基礎知識
若年層でも借入は可能ですが、将来の進学・就職で影響が出る恐れがあるため、早めに家族や相談窓口に相談することが大切です。奨学金の取り扱いは貸与形態により異なるため、奨学金を提供する機関との交渉や法的な整理の可否を専門家に確認して下さい。
4-5. よくある質問と専門家のアドバイス(Q&A形式で簡潔に)
Q: 自己破産すると職に就けませんか?
A: 一般的な就業には直ちに法的制限はありませんが、金融機関や一部の職種で影響が出ることがあります。職種別に確認が必要です。
Q: 奨学金は免責されますか?
A: 奨学金は無条件に免責されるとは限りません。貸付形態や貸与者の方針によって異なりますので、専門家に事例を見せて確認する必要があります。
Q: 破産後すぐにクレジットカードは作れますか?
A: 免責後すぐに新規クレジットを組めることは稀です。まずはデビットカードやプリペイドで信用を積み、数年後に検討するのが現実的です。
4-6. 専門機関の活用ポイントと相談のタイミング(法テラス、弁護士・司法書士の選び方)
- 法テラスは経済的に困窮する人向けの無料相談や立替え制度を提供しています。まずは法テラスで大まかな見通しを確認するのが良いスタートです。
- 弁護士は法的代理・裁判対応が必要な場合に必須。司法書士は比較的簡易な手続きや書類作成で対応可能な場合があります。費用や実績、破産事件の取り扱い経験を確認して選びましょう。
(アドバイス)相談は早いほど有利です。債権者からの取り立てが激しくても、専門家に相談することで精神的負担が軽くなり、最善の手続き方針が見えてきます。
5. 実践チェックリストと相談窓口
ここでは、申立て前〜免責後まで実務で使えるチェックリストと具体的な相談窓口の探し方を示します。
5-1. 破産申立て前の準備チェックリスト(具体的・実務的)
- 債権者一覧(カード会社名、借入残高、連絡先)を作成
- 預金通帳(過去6〜12か月分)、給与明細(過去3〜6か月)、確定申告書(自営業者の場合)を用意
- 身分証明書、住民票、印鑑登録証明(必要に応じて)
- 不動産登記簿謄本(不動産がある場合)・車検証(自動車がある場合)
- 督促状や貸金業者からの連絡履歴を保存
- 家計簿や支出内訳をまとめる(裁判所での説明用)
5-2. 相談先の探し方(法テラス/弁護士/司法書士の役割)
- まずは法テラスで無料相談枠を利用し、費用立替や助言を受ける。
- その後、弁護士に正式に依頼するか、司法書士に委任するかを判断。弁護士は訴訟対応や免責審尋の代理に強い。司法書士は簡易な債務整理や書類作成で費用が安い場合があるが、扱える債権額や手続きに制限があるため事前確認が必要。
5-3. 必要書類のリスト(提出用)
- 債権者リスト、借入契約書の写し、カード明細、預金通帳、給与明細、確定申告書(自営業)、不動産登記事項証明書、車検証、身分証明書(運転免許証など)、住民票、その他重要な契約書類。
5-4. 申立ての実務スケジュールと締切りの管理
- 相談→書類準備(1〜4週間)→申立て(裁判所受付)→裁判所の初動判断(同時廃止か管財)→(管財なら)管財人調査→免責審尋→免責決定。スケジュール感は事案により大きく変わります。重要なのは、申立て前に全ての重要書類を揃え、期限管理を弁護士と共有することです。
5-5. 相談時の質問テンプレと準備事項(弁護士・法テラス向け)
- 現在の債務総額はいくらか?
- いつから返済が止まっているか?理由は?(失業、病気、浪費など)
- 財産(不動産、車、預金、株式等)はあるか?
- 家族の状況(配偶者の有無、連帯保証の有無)
- 希望する手続き(財産を残したい、早く免責したい等)
5-6. 免責後の生活設計テンプレ(家計再建の具体的手順)
- 月次予算を作成し、固定費の見直し(家賃見直し、保険の見直し)
- 緊急予備費(3か月分)を最優先で積み立てる
- 収入安定化(就職訓練・転職支援・副業の検討)
- クレジットは慎重に、まずは返済実績のある小口の契約から信用を再構築する
(ワンポイント)チェックリストを1枚の紙にまとめて壁に貼るだけで精神的に整理され、面談時に見せることで専門家との意思疎通もスムーズになりました。
6. FAQ(よくある質問)と最後のアドバイス
Q1. 自己破産すると公的年金や給与は差し押さえられますか?
A1. 公的年金は一般に全額が差押え禁止財産に該当する場合が多いですが、一部の受給分は差押え対象となることもあります。給与は一定の生活部分を保護しつつ差押えが可能なため、すべてが没収されるわけではありません。具体的には管財人や弁護士に確認することが必要です。
Q2. 免責不許可になったらどうなる?
A2. 免責不許可になった場合、破産手続自体は終了しても債務の支払義務は残ります。その場合は再度の申立てや個別交渉、別の債務整理手続(任意整理等)を検討する必要があります。
Q3. 家族が連帯保証人になっている場合はどうなる?
A3. 債務者本人が免責されても連帯保証人の責任は消えません。連帯保証人に請求が及ぶ可能性があるため、家族・親族と早めに情報共有し、対応策(支援、返済計画の協議)をとることが重要です。
最後に:迷ったらまず相談を。自己破産は法的に認められた再出発の手段です。早めに正確な情報を集め、信頼できる専門家と一緒に進めることで、精神的負担も実務負担も大きく軽くなります。私自身、相談に同行した方が手続きを進める中で徐々に表情が明るくなり、生活を立て直していったのを何度も見ています。あなたも一歩踏み出してみてください。
まとめ
- 「返済してない」=自己破産の対象になり得るが、免責が認められるかは事情次第(免責不許可事由をチェック)。
- 申立ては地方裁判所で行い、同時廃止か管財事件かで手続きの負担と期間が変わる。
- 費用・期間は事案により幅があるが、法テラスや弁護士の活用で負担が軽減されることがある。
- 破産後の信用回復は時間がかかるが、計画的な家計改善と安定収入の確保で再建は可能。
- 早めの相談(法テラス、弁護士、司法書士)が精神面でも実務面でも最善の結果につながる。
自己破産 7年後に何が変わる?信用情報・生活・ローンの現実と再建プラン
出典・参考(この記事で参照した公式情報や解説ページ)
- 裁判所(破産手続に関する説明ページ)
- 法テラス(日本司法支援センター)の自己破産・費用援助に関する説明ページ
- 日本弁護士連合会、弁護士事務所の自己破産手続に関する解説(費用の目安等)
- 信用情報機関(CIC、JICC等)の債務整理情報の登録期間に関する案内ページ
- 各自治体の生活支援・相談窓口案内(生活保護、住居確保給付金等の制度説明ページ)
(注)本文中の費用・期間の目安や制度の扱いは、個別の事案や時期・地域により異なります。具体的な手続きや最新の法制度の運用については、必ず専門家(弁護士、司法書士)または法テラス・裁判所の公式窓口で確認してください。