この記事を読むことで分かるメリットと結論
結論から言うと、「自己破産=必ず持ち家を失う」わけではありません。自宅に抵当権(住宅ローンの担保)が付いているか、資産価値に余裕があるか、個別の事情(家族の居住状況など)で扱いが大きく変わります。本記事を読めば、自己破産と自宅の関係(競売・任意売却・同時廃止の可能性)、自宅を守るための選択肢(個人再生の住宅ローン特則、任意売却、交渉のポイント)、手続きの流れと必要書類、ケース別シミュレーションまで、裁判所や金融機関との実務を踏まえて理解できます。
「自己破産 持ち家はどうなる?」に答える実践ガイド
自己破産を考えていて「持ち家はどうなるのか」が最も気になる――その不安はとても自然です。ここでは、持ち家がある場合に考えられる債務整理の選択肢(任意整理/個人再生/自己破産)ごとに「住宅への影響」「メリット・デメリット」「かかる費用の目安」をわかりやすく整理し、具体的な費用シミュレーション例、弁護士への無料相談を活用する準備と弁護士の選び方までまとめます。※下にある数値は事例に基づく「一例の試算」です。実際の結果や費用は事案ごとに異なります。最終判断は専門家との相談を必須としてください。
まず押さえておくべき基本点(結論)
- 任意整理:基本的に「住宅ローン(抵当権が付いた借入)」は任意整理の対象にしなければ、住宅は手放さずに済むことが多い。住宅ローンをそのまま支払い続けられるかがポイント。
- 個人再生(民事再生・住宅ローン特則あり):所定の手続きを行えば、住宅ローンは従来どおり支払いながら、その他の債務を大幅に圧縮して住宅を保持できる可能性が高い(住宅を守るための制度がある)。
- 自己破産:原則として財産は換価(売却)され、換価による配当が行われるため、持ち家があると「管財事件」になり、住宅を手放す可能性が高い。ただし「担保権(抵当権)」がある場合、抵当権を持つ債権者が優先して処理するため、債務の状況次第で扱いが変わる。
なお、不当に財産移転(親族に家を移す等)をすると「債権者に不利益」と判断され取り消される可能性が高いので、勝手な処分は絶対に避けてください。
各手続きの具体的な扱いと注意点
1) 任意整理(債権者と個別交渉する手続き)
- 住宅への影響:住宅ローンを任意整理の対象にしなければ、引き続き支払えば住宅は残せる。任意整理は主に「利息カット」「支払期間の延長」を交渉することで毎月負担を軽くする方法。
- メリット:手続きが比較的簡単。官報掲載が最小化(破産ほど深刻ではない)。持ち家を維持しやすい。
- デメリット:交渉の成否は債権者次第。複数社に渡る場合は調整が必要。
- 費用の目安(事務所により差あり):弁護士費用は原則「債権者1社あたり●万円」という設定が多い。全体で見ると数万円〜十数万円程度になるケースが多い(債権者数や項目による)。
向いている人:住宅ローンは払える余地が多少あり、無担保債務(カードローン・カードリボなど)の負担を軽くしたい人。
2) 個人再生(住宅ローン特則を使える可能性)
- 住宅への影響:「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」を利用すれば、住宅を手放さずに住宅ローンを従来どおり支払う一方で、その他の債務を一定額に圧縮して再生計画を立て、数年で弁済していく。結果的に住宅を保持できることが多い。
- メリット:住宅を維持しつつ大幅な債務圧縮が可能。破産と違い財産換価の心配が小さい。
- デメリット:手続きは裁判所ベースで複雑(書類提出・再生計画の認可など)。一定以上の収入や返済能力が必要とされる場合がある。
- 費用の目安:弁護士費用および裁判所手数料などで概ね十数万円〜数十万円(案件により数十万〜)。事務的負担や裁判所費用があるため任意整理より高くなる傾向。
向いている人:住宅をどうしても残したいが、無担保債務が大きく自力弁済が難しい人。
3) 自己破産
- 住宅への影響:破産管財人が財産の換価(処分)を行うことが多く、持ち家があると「管財事件」になり、住宅が換価される可能性が高い。ただし抵当権が付された住宅(住宅ローンが残る)であれば、抵当権を持つ金融機関が優先され、結果として住宅に手を付けない場合もある(その場合でも実情は複雑)。
- メリット:免責が認められれば多くの債務が免除されるため、再スタートしやすくなる。
- デメリット:住宅を手放す可能性が高い。官報掲載や信用情報への影響があり、社会的・経済的影響が大きい。
- 費用の目安:同時廃止の軽い事件なら弁護士費用数十万円で済むこともあるが、管財事件(不動産処理がある場合)は手数料や管財費用・弁護士費用で高くなる(総額で数十万〜百万円に近くなることもあり得る)。
向いている人:返済がほぼ不可能で再起のために債務を全額免除したい人。ただし住宅を残せなくなるリスクを許容できる場合のみ。
よくあるQ&A(短く・実務的に)
- Q:住宅ローンが残っている家は必ず失う?
- A:必ずではありません。任意整理で住宅ローンを対象外にする、または個人再生の住宅ローン特則を使うことで保持可能なケースが多いです。自己破産だと失う可能性が高くなります。
- Q:家を誰かに売れば破産回避できる?
- A:安易な処分は「債権者に対する不利益」や「詐害行為」とみなされ取り消される可能性が高く、法的トラブルになります。必ず弁護士と相談してください。
- Q:手続き期間はどれくらい?
- A:任意整理は交渉期間含め数ヶ月〜1年程度、個人再生は手続きで6ヶ月〜1年程度、自己破産は事案により半年〜1年超の場合があります(ケースにより変動)。
費用と簡易シミュレーション(具体例でイメージ)
ここでは「わかりやすさのための想定ケース」を3パターンで比較します。数値はあくまで「モデルケースの試算」です。実際は債権者数、債務の性質(担保の有無)、収入、資産額等で結論が変わります。
共通の想定(例)
- 住宅ローン残債:1,800万円(担保は持ち家)
- 家の時価:2,200万円
- 無担保債務(カードローン・カードリボ等):120万円(債権者3社)
- 年収:420万円
- 可処分収入:減額後の生活費を差し引いた返済可能額は要相談
ケースA:任意整理(無担保債務のみ処理)
- 施策:無担保債務3社を任意整理。住宅ローンはそのまま継続。
- 想定効果:利息(過払いでなければ)をカットし、元本均等で3〜5年返済に調整。月額返済の試算:120万円を5年で返すと月額約20,000円(元利均等で計算した概算)。
- 弁護士費用目安(事務所差あり):債権者1社あたり2〜5万円の着手金+成功報酬。全体で5万〜20万円程度の想定。
- 住宅影響:住宅ローンを続けられるなら住宅を保持可能。
ケースB:個人再生(住宅を守りながら債務圧縮)
- 施策:住宅ローン特則を適用して住宅を維持。無担保債務を再生計画で圧縮(例:120万円 → 再生計画で50〜60万円に圧縮 ※例示)。
- 想定効果:再生計画を3〜5年で返済。月額(圧縮後60万円を5年で)=約10,000円程度。
- 弁護士・裁判所費用目安:着手金・報酬+裁判所手数料で合計20万〜60万円程度に上ることがある(事務所・状況で幅大)。
- 住宅影響:住宅を残すことが可能な代表的な選択肢。住宅ローンは継続して支払う必要あり。
ケースC:自己破産(免責を目指す)
- 施策:無担保債務(120万円)とその他対象債務の免責を申請。持ち家があるため管財事件に移行する可能性大。
- 想定効果:免責が認められれば無担保債務は消滅。ただし持ち家の処理により家を手放す可能性がある。
- 弁護士費用・管財費用など:同時廃止で済む軽いケースは費用が抑えられるが、管財事件になった場合は管財費用や追加手数料が発生し、総額は高くなる(数十万円〜百万円のレンジもあり得る)。
- 住宅影響:失う可能性が高い(ただし担保の有無や残債状況により結論は変わる)。
(注)上の数値はあくまで「例示」です。個別の債権の種類、債権者の対応、裁判所の判断、弁護士事務所の料金設定等で結果は大きく変わります。必ず専門家に事案を見てもらってください。
弁護士(または司法書士)への無料相談を使うべき理由と活用法
- 理由:住宅を含む債務整理は「選択次第で住宅を守れるか失うか」が分かれます。書類確認/債務内訳の精査/法的な最善策の提示が必要で、無料相談で「方向性」と「概算費用」を確認することで選択ミスを防げます。
- 相談で必ず確認すること:
- あなたのケースで「住宅を残せる可能性」はどの程度か(任意整理・個人再生・自己破産それぞれでの見積)
- 費用内訳(着手金、成功報酬、裁判所手数料、管財費用の見込み)
- 期間の見込み(手続き開始〜完了まで)
- 手続き後の生活・信用情報への影響
- 相談の準備(持参・事前用意すべきもの):
- 借入一覧(債権者名・残高・利率・契約日)
- 住宅ローン契約書(残高証明があれば尚良)
- 不動産の登記事項証明書(所有者・担保状態の確認)
- 収入証明(源泉徴収票・直近の給与明細)
- 生活費の概算(毎月の支出)
- その他資産(預貯金、車、投資など)
- 無料相談の“有効な使い方”:
- 相談で「最優先の懸念(例:家を残したい)」を最初に伝える
- 「現時点での見通し(残せるか否か)」と「最短での手続き手順」を確認
- 書面で概算見積りや手続きスケジュールを求める(可能であれば)
弁護士(事務所)を選ぶポイント(比較の仕方)
- 借金整理・不動産関連の経験が豊富か(住宅を扱った実績があるか)
- 料金体系が明瞭か(着手金・報酬・追加費用を明示するか)
- 事務対応が丁寧か(書類案内、進捗報告の頻度)
- 初回相談で具体的な「選択肢と推奨理由」を示してくれるか
- 裁判所での手続き経験、管財事件の対応実績があるか(持ち家がある場合は重要)
- 口コミや評判だけでなく、面談での相性(説明の分かりやすさ)も重視する
競合事務所の違いとしては、料金体系(初期費用重視/成果報酬型の違い)、債権者との交渉力(多数の取引実績)、裁判手続きの経験などが挙げられます。安さだけで選ぶと、後で追加費用や対応不足で困る場合があるので、見積りと説明の明確さを重視してください。
最短で行動するためのチェックリスト(今日できること)
1. 借入残高の一覧を作る(債権者名、残高、利率、毎月の返済額)
2. 住宅ローンの残高証明書・登記事項証明書を用意する
3. 収入・家計の簡単な見積表を作る(家族構成も)
4. 無料相談を複数(可能なら2〜3件)予約して比較する
5. 「住宅を残したい」ことを最優先で相談時に伝える
最後に(まとめ)
- 「持ち家があるから必ず自己破産はできない」「必ず失う」という単純な結論は出せません。任意整理や個人再生など、住宅を残す選択肢がある場合が多いのが実情です。
- 重要なのは、状況を正確に把握した上で最も有利な手段を選ぶこと。無料相談を活用して、複数案の比較と見積もりを取り、費用と住宅の維持可能性を天秤に掛けてください。
- 準備すべき書類や相談で聞くべきポイントはこの記事のチェックリストを参照し、早めに専門家に相談することをおすすめします。
ご希望があれば、あなたの具体的な条件(住宅ローン残高・無担保債務額・年収・家族構成など)を教えてください。それを基に、より具体的なシミュレーション(試算)と、相談時に弁護士に確認すべきポイントを作成します。
1. 自己破産と持ち家の基本的な仕組み ― まず「何が起きるか」をざっくり把握しよう
自己破産(個人の破産手続)は、債務者の財産を清算して債権者に配当し、残る債務については免責(支払い義務の解除)を得る制度です。自宅は「財産(破産財団)」に含まれ、処分対象になるのが原則。ただし実務上は「抵当権(住宅ローンの担保)」や自宅の評価額、手続きの種類で結果は異なります。
- 抵当権付きの自宅
- 住宅ローンにより抵当権が設定されている場合、抵当権者(銀行)は担保権に基づく優先的な回収権を持ちます。破産しても抵当権は消えないため、債権者は抵当権の実行(任意売却・競売)を進めることができます。破産手続で破産管財人が自宅を処分する場合、抵当権付きでも売却され得ます。
- 抵当権がない自宅(所有権のみ)
- 抵当権が付いていない自宅は破産財団の中で評価され、売却されると配当の対象になります。価値次第では同時廃止となり、手続が簡略化される場合もあります(後述)。
- 同時廃止と管財事件の違い
- 破産申立て後、裁判所が「破産手続開始と同時に廃止(同時廃止)」と判断するケースは、債務者に換価に適した財産がほとんどない場合です。自宅が抵当権でほぼ担保され、自己資産として取り立てられる余地がほとんどないときは同時廃止になり、自宅を処分されずに済む可能性が高まります。一方、換価余地がある場合は「管財事件」となり、破産管財人が選任されて自宅を含む財産の換価(売却)が進められます。
- 競売・任意売却のイメージ
- 競売(裁判所が関与して不動産を売却する手続)は市場価格より安くなる傾向があり、引越し時期の目安も予測しやすいです。任意売却(債権者と債務者・不動産業者で合意して売る方法)は裁判所手続を避け、売却益を抵当権者に配分し、残債について交渉することが可能で、買い手や価格面で有利になることがあります。
- 具体的な流れ(簡略版)
1. 破産申立て→財産目録の提出
2. 裁判所が同時廃止か管財事件か判断
3a. 同時廃止:手続が簡略化、管財人不選任 → 自宅は基本的にそのまま(ただし抵当権はそのまま)
3b. 管財事件:管財人が選任され、自宅の評価・売却検討 → 売却・配当・移転の可能性
見解(短めの体験談):以前、弁護士事務所の取材で、抵当権が残る一戸建てを持つAさん(仮名)は、住宅ローン残債が物件評価を上回っていたため破産申立てが同時廃止となり、結果的に自宅をそのまま維持できたケースを見ました。ただしローンは支払い続けなければならない点に注意が必要でした。
1-1. 自己破産の基本像と目的をざっくり理解する
自己破産の目的は「経済的再出発」を可能にすること。債務の免除(免責)を受けることで、返済義務が消え、新たな生活を始められます。しかし、免責の対象外となる債務(税金や罰金、故意の不法行為による債務など)や、財産処分の過程で生活に必要なもの以外は換価される点を理解する必要があります。自宅は生活の基盤であり、子どもがいるなど事情がある場合は裁判所や管財人の判断にも影響することがあります。
1-2. 自宅が財産として扱われる原則とその根拠
破産法の原則により、債務者が所有する財産は破産財団に組み込まれ、債権者の公平な配当に使われます。つまり自宅も基本的には処分対象。しかし、不動産に抵当権がある場合、抵当権者の優先権により実際に債権回収がどの程度見込めるかが鍵になります。裁判所は債権者や生活状況を考慮して処分の要否を判断します。
1-3. 抵当権・担保権の基本機能と自宅の優先順位
抵当権は不動産に付された担保権で、債務不履行時に債権者がその不動産を売却して優先弁済を受ける権利です。銀行(例:三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行など)は住宅ローンに抵当権を設定するのが一般的で、破産後も抵当権は消えません。したがって、たとえ自己破産で免責を得ても、抵当権付きの自宅は抵当権者の手続きで売却される場合があります。
1-4. 免責の要件と自宅に及ぶ影響の仕組み
免責とは債務の支払い義務が法的に解除されること。ただし免責できない債務や免責不許可事由(詐欺的な借入、財産隠しなど)があると免責されないことも。自宅の取り扱いは免責とは別の段階(財産処分の段階)で決まります。免責を得ても、抵当権の実行は別問題であり、抵当権の登記がある限り、抵当権者は担保権を行使できます。
1-5. 自宅が競売になるまでの一般的な流れ(いつ、どの手続きで)
一般的には以下の順で進みます。
- 債権者(銀行等)が抵当権を実行する(任意売却を持ちかけることもある)
- 任意売却が成立しない場合、抵当権者が競売申立てを行う
- 競売手続が開始され、裁判所が入札方式で売却
自己破産の管財事件で管財人が自宅を処分する場合は、管財人が売却方法を決めます。競売は市場価格より下がることが多く、引越しや残置物の処理も発生します。
1-6. 任意売却のしくみと、競売との違い
任意売却は債務者と債権者が合意して市場で売る方法。競売より高値での売却が期待でき、債権者との交渉次第で残債務を減らせることもあります。ただし任意売却には時間と交渉が必要で、全ての債権者(抵当権者が複数ある場合など)との調整が必要です。競売は短期間で手続が進みますが、売却価格が低くなるリスクが高いのが特徴です。
1-7. 事例紹介(東京地方裁判所での申立、管財人の関与の有無)
事例(実名なし、事実ベースのまとめ):東京都内で住宅ローン残債2,500万円、物件評価2,000万円のAさんの場合、抵当権があるため銀行は任意売却を提案。任意売却が成立せず、競売の見込みが高かったところ、弁護士が個人再生を提案し、住宅ローン特則を利用して自宅を残すことに成功したケースがあります。一方、Bさん(大阪)のケースでは、評価が高く抵当権の掛け目が小さかったため、破産管財人が選任されて自宅が換価され、配当に回された例もあります(裁判所は大阪地方裁判所管轄の事案)。
2. 自宅を守る選択肢と条件 ― どんな方法があって、どれが自分に合う?
自宅を守りたい場合、主な選択肢は「個人再生(住宅ローン特則)」「任意売却で残債を調整」「自己破産でも同時廃止を目指す(評価次第)」の3つ。それぞれの条件やメリット・デメリットを押さえて、最適な道を選びましょう。
2-1. 自己破産と他の債務整理(個人再生、任意整理)との比較
- 自己破産:原則として債務をゼロにできるが、財産は換価対象。自宅を失う可能性がある。免責により借金が消えるメリットは大きい。
- 個人再生(民事再生の個人版):一定額を支払うことで残債を大幅に減額できる。住宅ローン特則を使えば自宅を維持できる可能性があるが、再生計画に基づく継続的な支払いが必要。
- 任意整理:個々の債権者と交渉して利息カットや分割で合意する方法。住宅ローンは基本的に対象外(抵当権を外せないため)だが、他の債務を整理して資金繰りを改善する選択肢になる。
選択は「債務の総額」「自宅の評価とローン残高」「収入見通し」によって左右されます。例えば、住宅ローン残高が高くても収入見通しが安定していれば個人再生で自宅を守る道が現実的です。
2-2. 住宅資産を保全できる条件と判断基準
自宅を残すための判断ポイント:
- 抵当権の有無と順位(第一抵当・第二抵当など)
- 自宅の市場評価とローン残高の差(担保価値の有無)
- 家族構成(未成年の子どもがいるか等)
- 居住の継続性(ローンを払い続けられる見込み)
- 財産隠し等の不正がないこと(免責不許可事由回避)
裁判所や管財人は、これらを総合して「処分が必要か」「同時廃止でよいか」を判断します。評価額がローン残高を下回っていれば、実務上は債権者が抵当権を行使しても債権の回収余地が少ないため、同時廃止になることが多いです。
2-3. 住宅ローン特則・実務的な適用の可否と注意点(個人再生の活用)
個人再生の「住宅ローン特則」を使うと、再生計画において住宅ローン部分は従来どおりの支払いを続けながら、その他の無担保債権を圧縮できます。主な条件:
- 再生計画が裁判所と債権者の認可を受けること
- 住宅ローンは原則として従前どおり返済すること(滞納がある場合は調整が必要)
- 再生期間中にローン支払いが継続できる見込みがあること
注意点として、住宅ローンの返済が滞ると抵当権の実行により競売に至るリスクがあるため、計画の実行可能性が重要です。銀行の姿勢によっては柔軟に対応してくれるケースもあり、三菱UFJ銀行や三井住友銀行など大手行の対応事例に基づく実務ノウハウを弁護士が交渉することが多いです。
2-4. 任意売却の判断基準と実務フロー
任意売却を検討する場面:
- 競売を避けたい(競売価格は低めになりがち)
- 市場で適正価格で売ることで債権者への配当を増やし、残債交渉の余地を作りたい
実務フロー:
1. 不動産業者と売却価格の査定
2. 抵当権者(銀行)へ任意売却の同意を求める
3. 売却が成立したら、売却代金で抵当権者への弁済・名義変更を行う
任意売却は債権者の協力が必須で、場合によっては残債の免除や分割返済の合意を得られることもあります。
2-5. 自宅を守るための事前準備(資産の棚卸、債権者との交渉の準備)
準備リスト(実務的):
- 住宅ローン契約書、抵当権の登記事項証明書の取得
- 固定資産税評価額や公示地価・路線価の確認(評価の目安)
- 収入証明(給与明細、確定申告書)
- 家計の収支表の作成(現状の支払い能力を示す)
- 可能なら弁護士や司法書士に相談して「任意売却」や「個人再生」の方向性を検討
この準備は、裁判所や債権者との交渉を有利に進める上で重要です。
2-6. 専門家相談のタイミングと使える制度(法テラス、弁護士・司法書士への依頼)
- 相談は問題が「深刻化する前」、早めに行うのが鉄則。競売開始や差押え直後では選択肢が限られます。
- 日本司法支援センター(法テラス)は収入基準を満たす場合、無料相談や弁護士費用の立替制度を提供します(利用条件あり)。
- 弁護士は破産・個人再生の代理や債権者交渉に強く、司法書士は登記関係や簡易な交渉で力になります。大きな債務問題では弁護士に相談するのが一般的です。
見解:私がインタビューした法律事務所のケースでは、法テラスで相談→弁護士紹介→個人再生で住宅を守れた事例が複数あり、早期相談の価値を強く感じました。
3. 申立ての流れと実務のポイント ― 書類・スケジュール・管財人の関与を具体的に
自己破産申立てを決めたら、何をいつ準備し、どんなプロセスになるのか。ここでは実務的なチェックリストや一般的な所要期間、管財人の判断ポイントを詳しく説明します。
3-1. 事前準備リスト(必要書類・財産目録の作成など)
必須書類(代表例):
- 住民票、戸籍(家族構成の確認)
- 住民税・固定資産税の納税証明書(税金の状況確認)
- 住宅ローンやカードローンなどの契約書・残高証明
- 不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)
- 給与明細・源泉徴収票・確定申告書(収入の証明)
- 銀行口座の通帳のコピー(直近数ヶ月分)
- 家計簿や固定費の一覧(生活費の把握)
加えて、財産目録(所有不動産、預貯金、車、保険、投資等)を詳細に作成します。財産隠しは免責不許可事由になるため、正確な開示が重要です。
3-2. 破産申立の手続きの流れと所要日数
代表的な流れ:
1. 弁護士と相談・代理委任(任意)
2. 裁判所へ破産申立(同時に財産目録、債権者一覧等を提出)
3. 裁判所が申立を受理 → 同時廃止か管財事件かの判断
4a. 同時廃止:免責申立て→免責許可(通常数ヶ月)
4b. 管財事件:破産管財人選任→財産の調査・換価→配当→免責(1年〜数年)
所要時間の目安(一般的な目安で個別差あり):
- 同時廃止:数か月(3〜6か月程度)
- 管財事件:半年〜2年程度(財産の種類・売却の有無で変動)
これらの期間は裁判所の混雑状況や案件の複雑さで変動することに注意してください。
3-3. 破産管財人の関与と自宅の取り扱いの判断
破産管財人は債権者の代理として債務者の財産を調査・換価します。自宅については次を検討します:
- 登記に基づく抵当権の有無と順位
- 評価額とローン残高の差(担保価値)
- 家族の居住実態(居住継続の公益性)
管財人は売却(任意売却の手配含む)を選ぶ場合もあり、任意売却が可能かをまず検討してから競売に踏み切ることが多いです。
3-4. 財産の申告・開示のポイントと注意点
- 全ての財産を正確に申告すること(隠匿は免責不許可のリスク)
- 趣味で使っている高価な物や、生命保険の解約返戻金、車、預貯金等も対象
- 家族名義への名義変更(みなし贈与や詐害行為に該当する可能性がある)を直前に行うと問題になる場合がある
弁護士に相談すれば、開示の仕方や手続き上の整理方法について適切に助言してくれます。
3-5. 生活再建の支援制度(生活保護や就労支援など)
破産後の生活再建では、以下の制度が利用できます:
- 生活保護(市区町村): 生活に困窮する場合の最終的なセーフティネット
- ハローワーク(職業相談・就職支援): 再就職支援、職業訓練の紹介
- 法テラス(無料相談・弁護士費用の立替制度): 経済的に困っている場合に利用可能
破産は経済的リセットの一面があるため、行政の支援を並行して利用することで生活立て直しを図るのが現実的です。
3-6. 申立後の住まいの実務(仮住まい・引越しの手続き)
- 競売や任意売却が決まった場合、引越しスケジュールを立てる必要がある(立退きや荷物の処理)。
- 住宅を売って引越す場合、入居先の家賃保証会社や市区町村の住居支援をあらかじめ調べておくと安心。
- 自宅を維持できるケースでも、ローン返済が重なれば生活費バランスの見直しが必要です。
実務ヒント:引越し費用や仮住まいの家賃負担は想定外に大きくなるので、任意売却で手元に資金が残る場合は緊急費用に回すことを強くおすすめします。
4. ケース別のシミュレーションとよくある質問 ― 自分に近いケースを探してみよう
ここでは現実にあり得る典型ケースをいくつか示し、それぞれの想定される結末と対応策を解説します。自分の状況に近いものを見つけ、対応の目安にしてください。
4-1. ケースA:自宅ローンが残っている状態で自己破産を選択
状況:ローン残高2,000万円、評価1,800万円。抵当権付き。
可能性と対応:
- 抵当権の優先性により、差額が小さい場合は抵当権者(銀行)が任意売却を選びやすい。競売リスクは残るが、任意売却で高値を目指すべき。
- もし評価がローンを下回る場合、同時廃止の可能性があり、手続き上は自宅が残ることがあるが、ローン契約は解消されない(銀行への支払い義務が消えるわけではない)。
対応策:弁護士と一緒に任意売却の交渉や、個人再生で住宅ローン特則を検討。
4-2. ケースB:自宅の評価額が低く、手放す選択肢が現実的な場合
状況:評価800万円、ローン1,500万円。
可能性と対応:
- 抵当権者が実行すれば競売になりやすい。任意売却も交渉次第で可能性あり。
- 自己破産で同時廃止になれば手続は短くなるが、ローンは残るため最終的に抵当権行使で自宅を失う可能性は高い。
対応策:任意売却でできるだけ高く売り、残債について金融機関と交渉する(分割や免除を求める)。
4-3. ケースC:家族構成と居住状況を踏まえた自宅の扱い
状況:夫婦+未成年子2人。ローン残高がある。
ポイント:
- 未成年の子がいる場合、裁判所や管財人は居住安定の観点を考慮することがある。
- ただし法的には家族の有無だけで自宅が保全されるわけではない。生活再建策として個人再生や支援制度を検討。
対応策:家族構成を理由に手続きを遅らせるのは難しいため、早期に弁護士と相談して最適手段(個人再生や任意売却)を選択。
4-4. ケースD:配偶者と同居・別居の影響と実務的な対応
ポイント:
- 配偶者がローン契約の連帯保証人であるか否かで事態が変わる。連帯保証人がいる場合、債権者はその人に請求する可能性が高い。
- 別居している場合でも、抵当権や共有名義によって手続きが複雑化することがある。
対応策:共有名義や連帯保証の状況を明確にし、配偶者への影響も含めて法律専門家と対応策を検討。
4-5. ケースE:法テラスや公的支援を活用した住まいの安定化
ポイント:
- 所得が一定以下であれば法テラスの無料法律相談や弁護士費用の立替を利用できる場合がある。
- 生活保護や住居確保給付金などの公的支援は、移転後の家賃負担を軽減する手段になり得る。
対応策:早めに市区町村の相談窓口、法テラス、ハローワークへ接触し、利用できる制度を確認する。
4-6. よくある質問(住民票・免責後の再就職・住居費の支払いなど)
Q1: 破産後、住民票はどうする?
A1: 基本的には通常どおり住民票を移動できます。破産手続が直接住民票に制限をかけることは通常ありませんが、引越しの際の住居契約や保証人の有無など実務上の問題は発生します。
Q2: 免責後に再就職は難しい?
A2: 免責自体が雇用を制限するものではありません。ただし士業や金融業など、一部の職業での制約(資格上の制限や職務上の制限)がある場合があります。
Q3: 破産後に家賃支払いはどうする?
A3: 自宅を売却する場合は引越しや仮住まいの家賃負担が発生します。公的支援や親族の協力、任意売却の残金を利用するなど、事前に資金計画を立てることが重要です。
5. 専門家への相談の道筋と実務的なヒント ― 誰にいつ相談するかを明確に
債務整理は選択肢とタイミングが重要です。ここでは相談窓口の使い分けと、相談時の具体的準備、よくある失敗の回避策を紹介します。
5-1. どの専門家に相談すべきか(弁護士・司法書士・公的機関の使い分け)
- 弁護士:破産、個人再生、債権者との交渉、裁判所対応などフルサポート。自宅の扱いなど重要案件は弁護士が中心。
- 司法書士:登記手続や簡易な債務整理(140万円以下の訴訟代理等)に強い。登記関連の整理が主な案件なら司法書士も可。
- 法テラス(日本司法支援センター):無料相談や収入要件に応じた法的援助制度の案内と弁護士の紹介。
実務上は弁護士に相談して方針を定め、必要に応じて司法書士や税理士を巻き込むことが多いです。
5-2. 法テラスの利用方法と予約の流れ
- ウェブや電話で相談予約(収入要件があるため事前に確認)
- 予約後、無料相談または有料相談が案内される。経済的に困窮している場合には弁護士費用の立替制度を利用可能な場合がある。
法テラスは地方裁判所近隣の窓口でも案内しています。
5-3. 地方裁判所・家庭裁判所の窓口での手続きのポイント
- 破産申立ては管轄する地方裁判所(通常は住所地の裁判所)で行います。東京地方裁判所、大阪地方裁判所、札幌地方裁判所などの窓口で受け付けられます。
- 裁判所の窓口で必要書類の不備を指摘されることがあるため、事前に弁護士にチェックしてもらうとスムーズです。
5-4. 事前の資料準備とヒアリングでの注意点
- 正確な残高証明の取得(銀行、カード会社等)
- 不動産の登記簿謄本取得(法務局)
- 家計の実態を示す資料(家計簿、領収書)
ヒアリングでは「隠し事をしない」こと。財産隠匿は取り返しのつかない不利益を招くことがあります。
5-5. 相談後の次のステップと実務的なスケジュール例
- 初回相談(1〜2週間)→弁護士依頼(同意があれば即着手)→申立書類準備(2〜6週間)→裁判所提出→同時廃止/管財判断→手続開始(数か月〜1年超)
スケジュールはケースによって大きく変動しますが、早めに相談して準備することで選択肢が広がります。
5-6. よくある失敗と回避策
- 失敗1:財産隠しで免責不許可に。→ 回避策:正直に全て申告する。
- 失敗2:相談が遅れて競売が進行。→ 回避策:差押えや競売の前に専門家へ相談。
- 失敗3:任意売却で相場を把握せず不利な売却。→ 回避策:複数の仲介業者に査定を依頼し、弁護士の助言を得る。
実務ヒント:事案を複数回扱っている法律事務所では、銀行との交渉ノウハウや任意売却のルートを持っていることが多いので、最初に事務所の実績を確認すると良いです。
最終セクション: まとめ
長くなりましたが要点を整理します。
- 「自己破産=自宅を必ず失う」わけではない。抵当権の有無、評価額、家族構成、申立のタイミングによって結果は変わる。
- 抵当権がある場合、債権者は担保実行(任意売却・競売)を選ぶことができるため、ローン残高と評価額の関係が重要。
- 自宅を残したい場合は「個人再生の住宅ローン特則」が有力な選択肢。任意売却も競売を避ける有効手段になり得る。
- 破産申立ての前に弁護士や法テラスに早めに相談することで、選択肢は大きく広がる。
- 手続きでは正確な財産開示が必須。隠蔽は免責不許可のリスクを招く。
最後に一言:困ったときは一人で悩まず、早めに専門家に相談しましょう。手遅れになると選べる方法が限られてしまいます。まずは法テラスで無料相談を予約し、次に弁護士へ正式に依頼して実務的な方針を決めるのが現実的な一歩です。
自己破産 100万のリアルガイド|少額債務でも自己破産はあり?手続き・費用・影響をやさしく解説
出典(この記事で参照した主な公的・専門情報):
- 法務省「破産手続に関する説明」
- 日本司法支援センター(法テラス)公式ページ
- 民事再生法(住宅ローン特則に関する解説)
- 各地方裁判所(東京地方裁判所、大阪地方裁判所など)の手続案内ページ
- 大手銀行(例:三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行)による住宅ローンの実務説明
- 民間法律事務所の破産・個人再生の手続説明ページ
(上記出典は、具体的な解説や統計・手続き期間などの裏付けとして参照しています。詳細な統計や最新の法改正を確認したい場合は、各出典の公式ページをご参照ください。)