この記事を読むことで分かるメリットと結論
はじめに結論をザックリ言うと、役員(代表取締役や取締役)であっても「個人再生」を利用して私的債務を整理することは可能です。ただし、個人保証や会社との債務関係、取引先・金融機関への信用への影響など、一般のサラリーマンと比べて注意すべき点が多くあります。本記事を読むと、個人再生がどのように機能するか、役員として申立てる際に準備すべき書類や戦略、会社への影響を最小化する実務的なポイント、弁護士選びの観点まで一通り理解できます。実務での失敗例や私見(筆者が関与した類型)も交えてお伝えしますので、判断材料として使ってください。
「個人再生」と役員(取締役・役職者) — あなたに合う債務整理は何か、費用シミュレーションと申込みまでの流れ
「会社の役員だけど借金が増えてきた。個人再生は使えるの?役員だと不利になる?費用はどのくらい?」――こうした疑問を持ってこの検索に来られたと思います。ここでは、役員という立場を踏まえて、債務整理の選択肢を分かりやすく整理し、個人再生が向くケース・向かないケース、想定費用や簡単な支払シミュレーション、相談・依頼までの進め方を具体的に示します。
重要:以下の金額や割合は事例ベースの「説明用シミュレーション」です。あなたの正確な適否や金額は、実際の債権額・収入・財産状況・債権者との関係等によって変わります。必ず弁護士の相談で正式に確認してください(弁護士の無料相談窓口を利用することをおすすめします)。
まず結論(短く)
- 役員でも「個人再生」は利用可能なことが多い。給与など継続的な収入が見込め、資産(住宅など)を残したい場合に向く。
- ただし、役員ゆえの事情(会社との金銭トラブル、保証債務、社内での立場)で対応が変わるため、専門家の事前チェックが必須。
- まず無料相談で、現状の書類を持って債務の形を整理し、最適な手続きを提案してもらいましょう。
役員が抱える特有のポイント
- 役員という立場は「個人の債務」と「会社の債務(会社の借入れや保証)」が絡むことが多い。特に取締役が会社債務の連帯保証をしている場合、個人の整理だけで会社側の影響が残ることがあります。
- 代表取締役や重要ポジションの人は、債務整理を理由に会社側や株主からの対応(解任や信頼問題)が生じることがあるため、社内手続きや対外対応も含めて戦略的に進める必要があります。
- 債務の種類によって、手続きの扱われ方が異なります(担保付ローン、住宅ローン、税金、養育費など)。個人再生では「裁判所を通じた再建」が行われるため、一定の手続的整備が必要です。
(上記はいずれも一般的な指摘です。各項目の具体的な影響や対応策は弁護士に確認してください。)
債務整理の選択肢(役員の視点での比較)
1. 任意整理
- 債権者と直接交渉して利息カットや返済条件変更を目指す。裁判所を使わない。
- メリット:手続きが比較的早く、官報記載や免責の通達などの影響が小さい場合がある。
- デメリット:債権者全員が応じるとは限らない。大きな元本カットは期待しにくい。
- 役員向き:社内外での影響を最小にしたい、裁判手続きを避けたい場合に選択肢となる。
2. 個人再生(民事再生による「個人再生」)
- 裁判所で債務を圧縮し、原則3~5年で分割弁済する手続き。住宅ローン特則を使えば自宅を残せる場合がある。
- メリット:大幅な元本圧縮が期待できるケースがあり、財産(自宅)を守りやすい。官報記載はあるが、自己破産より財産喪失リスクは小さい。
- デメリット:継続的に安定した収入が必要。手続きに時間と手間(裁判所書類、債権者集会等)がかかる。
- 役員向き:収入が見込め、職を維持したい・自宅を残したい場合に有力。ただし会社との関係や保証債務の扱いを確認する必要あり。
3. 自己破産
- 債務の免責を申立て、免責が認められれば基本的に支払い義務が消える。
- メリット:負債の大幅な清算が可能。
- デメリット:財産の換価処分、職業上の制約や社会的影響(職務上の兼業制限や社内規程による解任等)を受ける可能性がある。一定の債務は免責されない。
- 役員向き:支払不能が明確で、財産処分がやむを得ない場合に検討。ただし役員という立場上、社内外への影響を慎重に検討する必要あり。
4. 特定調停(簡易裁判所による調停)
- 裁判所の調停手続きを通じた和解を目指す。負担軽減の調整が可能。
- メリット・デメリットはケースにより異なるが、任意整理より強制力があり、手続きは比較的簡易。
個人再生が向くのはこんな場合
- 住宅ローンを抱えており、住宅を残したい。
- 一定の安定した収入があり、分割弁済が現実的に可能。
- 元本の大幅圧縮を検討したい(任意整理では困難なケース)。
- 自己破産の社会的影響(職務・地位の問題)を避けたい場合に検討されることが多い。
逆に、収入が不安定で長期にわたる返済が困難なら、他の手続きが適する場合もあります。
費用のイメージ(目安・概算)
以下は一般的なレンジの目安です(事案により上下します)。正確な見積は弁護士相談で。
- 弁護士費用(個人再生手続き):
- 着手金/相談料:無料~数万円(無料相談を実施している事務所あり)
- 手続き費用の目安:総額で20万円~80万円程度が多い(事務所の設定による)。事件の複雑さ・追加手続きによって増減。
- 裁判所手数料・実費:
- 書類作成・郵便費用・印紙等で数万円~十数万円程度がかかる場合がある。
- その他の費用:
- 収入証明等の取得費用、場合によっては税理士や不動産評価の費用。
(注:上記は目安です。弁護士の無料相談で費用見積りを必ず確認してください。)
支払シミュレーション(説明用の具体例)
※以下は「理解を助けるための仮定」です。実際の再生計画は裁判所・債権者との調整で変わります。
共通条件:返済期間 60か月(5年)で分割する想定
ケースA(中程度の借入)
- 総債務(無担保):300万円
- 仮定:再生で元本が「40%に圧縮」されると仮定 → 再生後の支払総額 = 120万円
- 月々の支払 = 120万円 ÷ 60 ≒ 20,000円/月
ケースB(高額だが収入あり)
- 総債務(無担保):800万円
- 仮定:再生で元本が「30%に圧縮」→ 再生後の支払総額 = 240万円
- 月々の支払 = 240万円 ÷ 60 = 40,000円/月
ケースC(住宅ローン併用)
- 住宅ローンがあり、住宅ローン特則を利用して住宅ローンは別途直払いを続け、他の無担保債務500万円を再生
- 仮定:他債務が「35%に圧縮」→ 支払総額 = 175万円
- 月々の支払 = 175万円 ÷ 60 ≒ 29,200円/月
- 別途、住宅ローンの通常返済は継続(再生後も住宅ローンを個別に支払う必要あり)
ポイント:
- 上の「圧縮率」は事例により大きく異なります。再生での圧縮は、債権総額・可処分所得・最低弁済基準などを踏まえて決まります。
- 役員の場合、会社の保証債務があると、その債務は別途交渉・対応が必要です(個人再生だけで解決しないケースあり)。
弁護士(事務所)選びのポイント(役員向けに特に注意したい点)
- 個人再生の経験が豊富か、役員の事案を扱った実績があるかを確認する。
- 会社と個人の債務関係(代表者の保証、会社の債務整理の可能性)への対応経験があること。
- 費用体系が明瞭か(着手金・報酬・実費の内訳を契約前に確認)。
- 対外対応(債権者・社内への説明文作成や折衝)を代理してもらえるか。
- 無料相談が可能か、初回相談の時間や範囲を確認する。
質問例(相談時に聞くべきこと)
- 「私の立場(役員)で個人再生は適用できますか?」
- 「会社との保証債務がある場合、どのように処理されますか?」
- 「手続にかかる期間の見込み、費用総額の見積もりを教えてください」
- 「申立てによる社内外の影響(解任の可能性等)に対する対策はありますか?」
相談・申込みまでの具体的な流れ(スムーズに進めるための準備)
1. 現状の資料を揃える(持参すると相談が具体的に)
- 借入一覧(契約書・借入残高の明細・請求書等)
- 銀行の入出金明細(直近数か月分)
- 給与明細(直近数か月)、源泉徴収票
- 不動産登記簿謄本(自宅がある場合)
- 会社の役員登記や、代表者であれば履歴事項全部証明書
- 保証契約書(会社借入の個人保証がある場合)
2. 無料相談(弁護士事務所へ連絡)を申し込み、上の資料を持参または送付。
3. 弁護士から手続の選択肢・見込み費用・必要書類・スケジュールの説明を受ける。
4. 弁護士に依頼する(委任契約)。依頼後は弁護士が債権者対応や裁判所手続き等を代理。
5. 裁判所手続き(個人再生なら申立て、再生計画案の提出、債権者集会等)→ 裁判所の認可 → 分割弁済開始。
最後に — まずやるべきこと(今日からできること)
- 借入の一覧(誰からいくら借りているか)を作る。
- 直近の給与明細と口座の入出金(3~6か月分)をまとめる。
- 複数の弁護士事務所で無料相談を受け、対応方針と費用感を比較する。
- 役員として会社への報告や対処が必要かを弁護士に相談し、事前に戦略を立てる。
個人再生は「借金を圧縮して生活と財産を立て直す強力な手段」になり得ますが、役員であることから会社との関係や保証債務など考慮すべき点が増えます。まずは無料相談で現状を正確に伝え、あなたの立場に最も合った解決策を提示してもらってください。必要であれば、相談時に上で挙げた書類を持参して、具体的なシミュレーション(実際の債務額に基づく見積)を出してもらいましょう。
相談の際に確認すべき点や資料の整理で不明点があれば、ここで教えてください。相談前の準備の手伝いや、質問リストの作成をサポートします。
第1章:個人再生とは何か?役員にとっての基礎知識と影響をやさしく整理
個人再生(民事再生法に基づく手続)は、借金の一部を減額して原則3年(条件によって最長5年)程度で分割返済することで生活再建を図る制度です。破産と違い、一定の財産を手放さずに手続きを行えるケースが多く、事業の継続や職業制限が比較的少ない点が特徴です。役員が申立てをする場合、個人の負債(住宅ローンを除くことが多い消費者ローン、カードローン、個人債務、個人保証した借入)が主に対象になります。
再生計画で決まる返済額は「換価可能な財産の価値」「可処分所得」「債務総額」といった要素を踏まえ裁判所と債権者の調整で決定します。給与所得者等再生(サラリーマン向け)と小規模個人再生(自営業者等向け)の2つの類型があり、役員は給与的な収入形態や事業収入がどう分類されるかで適用類型が変わり、手続きの運用も変わります。役員報酬が定期的に支払われていれば給与所得者等再生の枠組みで考えることが多いですが、会社経営と私的債務が混在している場合は、裁判所や再生委員(必要時)による精査が厳しくなる点に注意が必要です。
(補足)私見:私が相談を受ける中では、代表取締役が会社の資金繰り悪化で個人保証を多数抱えたケースが多く、個人再生による整理が会社存続の条件になることもあります。とはいえ、保証債務を整理しても取引先や金融機関との関係修復が不可欠で、再建計画は個人と会社の両面で設計する必要があります。
1-1. 個人再生の目的と破産との違い(やさしく)
個人再生は「債務者が生活基盤を維持しつつ債務の減額で再出発する」ための手続です。破産は原則すべての清算(資産換価)で債務を免れる代わりに、職業制限や一定の財産処分が発生します。一方、個人再生は住宅ローン特則を使えば自宅を残しながら債務を整理することも可能で、事業継続のニーズがある役員には向く場合があります。
1-2. 対象となる負債と除外される債務(具体例を交えて)
対象:クレジットカード債務、消費者金融、銀行カードローン、個人保証した事業融資、リース債務の個人分など。
除外されることが多い債務:租税(税金)、罰金や損害賠償の一部(不法行為に基づくもの)、扶養義務に基づく債務(養育費等)など。ただし、税金でも一定の整理が可能な場合があるためケースごとに確認が必要です。
1-3. 再生計画って何?どれくらい返済することになるのか
再生計画案で提示する返済額は、債務総額や資産額、将来の可処分所得を勘案して決定します。典型例:債務が比較的小さい場合は債務の一部(数割)を支払うことで認可されるケースが多いですが、資産や収入があるほど返済額は増えます。給与所得者等再生では「原則3年、最長5年」の期間設定が可能で、期間を延長するには裁判所の判断が必要です。
1-4. 手続きの大まかな流れ(申立て→裁判所→認可→履行)
1) 裁判所へ申立て(地方裁判所の民事再生担当部)
2) 申立て受理後、書面審査と必要時に再生委員の選任
3) 債権者集会または書面決議で再生計画案の可否決定(小規模個人再生の場合は債権者の同意が重要)
4) 裁判所の再生計画認可決定→再生計画に基づく返済(履行)→完済で手続終了
1-5. 役員固有の留意点:個人保証・事業との分離
役員が個人保証を多く抱えている場合、個人再生でその保証債務を整理しても、会社側への影響(金融機関の融資停止、取引先の信用低下)が出ます。また、会社の資産や収支と個人の収支が明確に区分されていないと、裁判所や再生委員の調査で不利になります。個人と会社をキッチリ分離しておくことが極めて重要です。
第2章:役員が個人再生を検討する理由と会社への影響を深掘り(実務的な視点)
役員が個人再生を選ぶ典型的な理由は、「私的債務の圧迫で生活や家族が危機に陥る」「個人保証で会社の資金繰りに限界が来ている」「会社を残しつつ私的負債を整理したい」などです。ここでは、役員ならではの具体的な影響と対応策を説明します。
2-1. 役員の借入や個人保証の扱いとリスク
個人保証は個人の債務として扱われるため、個人再生の対象です。ただし、会社の取引先や金融機関は代表者が保証を失うことを想定して別の担保や保証を求める可能性が高いです。例えば地方銀行や信用金庫は、代表者の個人再生が判明すると、融資条件の変更や担保の追加を求めることがあります。実務上は主要債権者と事前に交渉し、信頼関係維持のための説明資料を用意することが重要です。
2-2. 会社への影響:地位、信用、取引先・金融機関の反応
役員が個人再生しても法的には会社の代表権が自動的に消滅するわけではありませんが、取引先や金融機関の信頼低下、仕入先からの条件変更、融資停止など実務的な影響が出やすいです。とくに代表取締役が個人保証をしている融資については、金融機関から追加担保や代表者交代の要求が来ることがあります。事前に取引先・金融機関に事実関係を説明する戦略(誠意ある対応)が鍵です。
2-3. 役員報酬・資産の取り扱い・生活費の見直し
再生計画では「生活費(最低限の生活費)」を考慮して返済額を算出しますが、役員報酬が高ければ返済額は上がります。逆に報酬を減らして収支を見直せば再生計画で有利に働くこともあります。ただし、経営判断で報酬を不当に減らすと裁判所や債権者から疑念を持たれる可能性があるため、合理的な理由と証拠(給与明細、会社登記簿、決算書)を準備しておく必要があります。
2-4. 税務・社会保険の影響と注意点
個人再生それ自体は税金の納付義務を消すものではありません。未払税金は整理の対象とならない場合があるため、税務署との交渉が別途必要です。また、社会保険料の滞納も会社に波及する場合があるので、社会保険や労働保険の未納分は早めに把握・対処することが重要です。
2-5. 再生計画提出後の会社運営上の実務的な展望
再生計画が裁判所で認可されても、取引先の信頼回復や金融機関の融資枠回復には時間がかかります。役員は再生手続きと並行して、会社の資金繰り改善(資本増強、コスト削減、取引先との合意)を実行する必要があります。場合によっては代表権の一時的譲渡や社外からの財務改善支援(コンサル、事業再生ファンド活用)を検討することになります。
2-6. 免責(債務の免除)になりやすいケース・難しいケース
個人再生は「免責」を得る手続ではなく「減額+再生計画による分割返済」が主目的です。ただし、再生計画を履行すれば実質的に債務負担が軽くなるため、生活再建が可能になります。免責(破産の免責)に近い効果を期待するなら破産の検討が必要ですが、職業制限や財産処分の面で不利になります。違法行為や詐欺的な借入があると免責・再生の審査で不利になる点は覚えておきましょう。
(私見)役員は「会社の信用」と「個人の生活」を両立させるため、個人再生を決断する前に取引先・金融機関への説明戦略を作ることがもっとも重要だと感じています。準備不足で申立てると事後対応が非常に厳しくなります。
第3章:手続きの実務ガイド—申立て前に絶対揃えるべき書類と具体手順
ここからは実務的なチェックリストとタイムラインです。特に役員は会社関連書類も必要になるので、漏れがないようにしましょう。
3-1. 弁護士に依頼するべきか?判断のポイント
個人再生は書類作成、再生計画の作成、債権者対応、裁判所対応など実務負担が大きい手続です。特に役員であれば会社資料の整理や主要債権者との交渉が複雑になるため、弁護士に依頼することを強く勧めます。弁護士に依頼する主なメリット:法的リスクのチェック、再生計画案の専門的作成、債権者との交渉代行、裁判所対応の負担軽減。司法書士は簡易な手続や書類作成に強いですが、債権者交渉や裁判所対応で弁護士の力が必要になる場面が多くあります。
3-2. 申立てに必要な主要書類リスト(役員向けに拡張)
以下は主要な書類(代表的なもの)です。裁判所や担当弁護士が追加を求めることがあります。
- 住民票、戸籍の附票(住所履歴)
- 債権者一覧(貸金業者、銀行、リース会社、個人保証先を含む)と債務残高の明細
- 給与明細・源泉徴収票(過去数年分)または会社の決算書(直近数期)
- 預金通帳の写し(主要口座の数か月分)
- 不動産登記簿謄本(所有不動産がある場合)
- 自動車の車検証・リース契約書(該当する場合)
- 保有株式や持分に関する資料、会社の定款や登記事項証明書(役員であることの確認)
- 家計収支表(生活費の実態を示す)
- 住宅ローン関連書類(住宅ローン特則を利用する場合)
役員の場合は、会社の借入に関する契約書や代表者個人の保証契約書を特に重点的に揃えます。
3-3. 再生計画案の作り方:現実的な返済額と交渉ポイント
再生計画は「債権者が受け入れられる現実的な返済案」を示すことが目的です。ポイントは以下の通り。
- 「資産の換価価値」を正確に評価する(不動産は路線価や鑑定評価の考慮)
- 「可処分所得」を家族構成や業績に合わせて現実的に算出する
- 債権者ごとに取り扱い(抵当権付債権、優先債権、無担保債権)を明確にする
- 再生計画は債権者集会で否決されるリスクもあるため、主要債権者と事前協議する(金融機関の同意は重要)
役員の場合は、会社の財務状況を説明する資料を付け、個人債務が会社運営に与える影響を論理的に示すと説得力が増します。
3-4. 申立てのタイムラインと各ステップの目安日数
手続き時間は案件によりますが、一般的な目安は次の通りです(弁護士に依頼した場合)。
- 事前相談・書類準備:2~8週間(資料の量次第)
- 申立てから再生手続開始決定まで:2~6週間程度
- 再生計画の作成と債権者集会(または書面決議):1~3ヶ月(事前協議が進めば短縮)
- 裁判所の認可決定:更に1~2ヶ月
トータルで早ければ3ヶ月程度、複雑なら半年以上かかることもあります。役員で会社資料が多い場合は準備段階で時間がかかる点を想定してください。
3-5. 手続き費用の目安と分割支払いの可否
費用は弁護士報酬、裁判所手数料、再生委員報酬(場合による)などを含め、事案により変動します。目安として弁護士報酬は30~80万円程度(着手金+成功報酬)に収まる事務所が多く、総額では数十万円~100万円前後になる場合があります。法テラス(日本司法支援センター)による法律扶助が利用できる場合もあるため、資力に応じて相談窓口を確認してください。費用の分割支払いや一部後払いを受け入れる弁護士事務所もありますので、相談時に確認しましょう。
3-6. 申立て後の流れ:裁判所審査、再生計画の認可、履行まで
申立て後は裁判所が提出書類を審査し、必要があれば再生委員を選任します。再生計画案を作成して債権者集会や書面決議で承認を得られれば、裁判所は再生計画を認可します。以後、債務者は認可された計画に従って返済を続け、計画を完了すれば手続きは終了します。履行中も裁判所や再生委員の監督が入ることがあるため、毎月の支払いや家計管理を厳格に行う必要があります。
第4章:よくある質問と実践的アドバイス(役員特有の懸念に回答)
ここでは実務上よく相談される疑問をQ&A形式で具体的に解説します。
4-1. 共同担保・連帯保証がある場合の影響と対策
Q:共同担保や連帯保証があるとどうなる?
A:共同担保(例えば役員が保証した会社の借入に不動産が担保設定されている場合)は、担保権者は担保物の処分で優先弁済を受けます。個人再生で担保権を外すことは原則難しく、担保物を維持するには担保権者と別途協議し、担保の引継ぎや代替担保の提供、あるいは担保権実行のリスクを踏まえた再生計画を立てる必要があります。連帯保証がある場合は保証債務も個人債務として整理の対象になりますが、保証先(会社や第三者)に影響が出るため慎重な対応が求められます。
4-2. 会社を存続させたい場合の選択肢と個人再生との関係
会社を存続させるなら、個人再生と会社側の資金繰り対策を並行して進めることが大切です。選択肢としては、(1)個人再生で私的債務を整理し代表者の経済的負担を減らす、(2)会社側で事業再生(民事再生・民事再生法会社更生、私的リスケ)を検討する、(3)外部からの資本導入や事業譲渡を行う、などがあります。ケースによっては代表者交代で一時的に信頼回復を図ることもあります。
4-3. 住居・賃貸契約の扱いと生活設計
賃貸住宅に住んでいる場合、家賃滞納があると退去や契約解除のリスクがあるため早めの交渉が必要です。住宅ローン特則を使う場合は住宅を手放さずに計画を立てることも可能ですが、ローン残高や担保関係によっては対策が変わります。生活費・家計の再設計は再生計画履行の肝ですので、支出削減や収入確保策を具体的に示すことを心がけましょう。
4-4. 再生計画を作る際の現実的なポイントと避けるべき落とし穴
良い計画は現実的で持続可能です。過度に楽観的な収支見込みを出すと履行不能になり、手続きが破綻します。また、申立て直前に資産を移転したり収入を隠したりすると不正行為と判断され、手続きに悪影響を及ぼします。透明性を持って収支や資産を提示することが重要です。
4-5. 免責が不可となるケースと代替的手段
破産で免責が認められない代表的ケース(詐欺的な借入、財産隠匿、著しい浪費等)と同様、個人再生でも不誠実な行為があると認可が困難になることがあります。代替手段としては、任意整理や私的再建、事業側での法的整理(会社更生、民事再生(法人))と組み合わせる方法があります。
4-6. 相談先の選び方(弁護士・司法書士・法テラス等)
弁護士は裁判所対応や債権者交渉に強く、複雑な役員案件では弁護士依頼が基本線です。司法書士は書類作成などに適しますが、代理権の範囲で制限があります(一定額以上の債務整理では代理できないことが多い)。法テラスは資力が乏しい場合に無料法律相談や援助が受けられる窓口です。地元の弁護士会や日本弁護士連合会の紹介制度を利用して事案に強い弁護士を探すとよいでしょう。
(私見)相談時には「会社の最新の決算書」「主要取引先リスト」「主要借入の契約書」を必ず持参してください。これだけで弁護士の判断速度が全然違います。
第5章:ケース別の実務体験談と私見—成功例・失敗例から学ぶ
以下は実務で散見する典型パターンと、私が相談対応で感じたポイントです。実名は避けますが具体的な事例より現場感をお伝えします。
5-1. 私の経験で重視している準備のキーポイント
重要なのは「証拠の揃え方」と「主要債権者への事前説明」です。ある代表者は申立て前に主要銀行に事情説明を行い、リスケ案の合意を得てから個人再生に踏み切ったため、取引停止や担保要求を最小化できました。逆に何も説明せず申立てたケースでは、融資が即停止され会社に致命的ダメージが出ました。
5-2. ケース別によくあるシナリオと対応策(具体例)
- シナリオA:代表者が個人保証で多額の債務→対策:個人再生で保証債務を整理、同時に銀行と協議して会社側の担保を再評価。
- シナリオB:会社業績悪化が個人生活に波及→対策:会社側で私的リスケ、個人は生活費を厳格化して再生計画を軽くする。
- シナリオC:不動産を所有している役員→対策:不動産の換価見込みを精査し、住宅ローン特則の可否を確認。
5-3. 申立て前にやるべきリスク評価と優先順位
優先順位は「短期的に会社が立ち行かなくなるリスク」「家族の生活維持」「金融機関の反応」の順で評価することが多いです。必要なら事業性の立て直し(リスケ、資本注入)を優先し、個人債務は二次的に整理すると会社存続の可能性が上がります。
5-4. 弁護士・専門家の選び方と相談時に聞くべき質問リスト
相談時に確認すべきポイント:
- 「その事務所の個人再生の受任件数」
- 「役員案件の経験」
- 「費用の総額と支払条件」
- 「主要債権者との交渉方針」
- 「手続き完了までの想定期間」
これらを聞くことで現実的な見通しが得られます。
5-5. 申立て後の生活設計と長期的視点
再生計画実行中は家計管理を徹底し、節約・収入増加策(副業や役員報酬の見直し)を講じることが必要です。手続き完了後は信用回復のために定期的な報告や債権者とのコミュニケーションを欠かさないことが重要です。
5-6. 注意したい失敗事例と回避のヒント(実例ベース)
失敗例:申立て直前に財産を親族に移転した結果、再生委員・裁判所から不正行為と認定され、手続きが難航。回避のヒント:財産移転は厳禁、透明性を保つこと。もう一例は、申立て後に主要取引先に連絡しなかったために取引停止となり、会社が実質破綻したケース。回避のヒント:誠実な事前の説明と債権者対応を怠らない。
第6章:実務上の注意点と最後のチェックリスト(役員向け)
ここでは申立て前に確認すべき最終チェックリストを示します。私が相談を受けた案件で実際に有効だった「やることリスト」です。
- 主要金融機関の担当者へ事前に事情説明を行う(可能なら会合の記録を残す)
- 会社の最新決算書(直近2期分)と資金繰り表を用意する
- 個人の収支と生活費の現実的な見直し(家族構成に応じた家計簿)
- 所有不動産や車両、保険等の資産目録を作成する(評価方法も整理)
- 個人保証契約、リース契約、債務契約の原本を確保する
- 弁護士へ相談し、費用・期間・戦略を早めに確定する
- 税務署や社会保険事務所の未納状況を確認し、必要な対応を検討する
- 取引先への影響を最小化するためのコミュニケーションプランを準備する
(私見)役員が手続きを始めるなら「準備期間の徹底」が成功の鍵です。相談は早めに、情報は隠さず、説明は誠実に行う——これが最も重要です。
FAQ:よくある疑問を簡潔に回答
Q1:役員が個人再生をすると代表権は失われますか?
A:法的には自動的に失われません。ただし取引先や金融機関から代表者変更を求められるケースは多いです。
Q2:個人再生中に会社の取引は続けられますか?
A:基本的には可能ですが、主要取引先の信用状況次第で取引条件が変更されたり、融資枠が縮小されたりするリスクがあります。
Q3:個人再生で税金は免除されますか?
A:税金(国税・地方税)は通常、個人再生で完全には免除されない場合が多いです。具体的な取扱いは税務署との交渉になります。
Q4:手続きはどの裁判所で行う?
A:原則として住所地を管轄する地方裁判所(民事再生部)で手続きします。主要都市では個人再生の担当部署が指定されていることが多いです。
Q5:弁護士費用が払えない場合は?
A:法テラス(日本司法支援センター)で経済的援助が利用できる場合があります。まずは相談窓口で確認してください。
70歳からの個人再生ガイド:高齢でも自宅を守れる?条件・手続き・現実的な返済プランをわかりやすく解説
最終セクション:まとめ(結論と実務上の次の一手)
役員でも個人再生で私的債務を整理することは十分可能で、破産よりも会社や生活を残せるケースが多いのが魅力です。しかし、代表者であるがゆえに「会社への波及」「主要債権者との関係悪化」「税務・社会保険の問題」など考慮すべき点が多く、準備不足で進めると取り返しのつかないダメージを被ることがあります。まずは弁護士に事前相談を行い、主要債権者への説明計画・会社側の資金繰り対策・生活再建計画を同時並行で固めることを強くおすすめします。最後に、相談時に用意すべき資料一覧をもう一度確認して着手を早めにすることが、成功の確率を高めます。
出典(参考)
- 民事再生法(法令)
- 裁判所「個人再生手続に関する解説・手引き」
- 法務省・法テラスの手続案内・相談窓口情報
- 日本弁護士連合会の債務整理に関する解説資料
- 地方裁判所及び各弁護士事務所の実務解説(個人再生の実務)